「統合」と「レジリエンス」 の両立 ~複雑化するシステムを制御する

- 1. 1. なぜ今、「統合」と「レジリエンス」の両立がクラウド戦略の核心なのか?
- 1.1. 1.1. デジタル変革の加速と複雑化するシステム環境
- 1.2. 1.2. 統合による効率化の追求と、増大するシステム障害リスク
- 1.3. 1.3. 【独自の視点】単なる効率化では不十分。事業継続を左右する「攻め」と「守り」の統合的視点
- 2. 2. システム統合とレジリエンス、それぞれの本質的な意味合いとは?
- 2.1. 2.1. システム統合:サイロ化されたデータの解放と業務プロセスの最適化
- 2.1.1.1. データのサイロ化が生み出す様々な課題
- 2.2. 2.2. レジリエンス:予期せぬ障害からの迅速な回復と事業継続性の確保
- 2.3. 2.3. 統合とレジリエンスは相反する概念なのか?両立の鍵となる考え方
1. なぜ今、「統合」と「レジリエンス」の両立がクラウド戦略の核心なのか?
1.1. デジタル変革の加速と複雑化するシステム環境
近年、企業を取り巻くビジネス環境は、かつてないスピードで変化しています。デジタルトランスフォーメーション(DX)の波はあらゆる産業に浸透し、企業は競争優位性を確立するため、積極的にテクノロジーを活用しています。その結果、クラウドサービスの導入は加速し、AI、IoT、ビッグデータなどの先進技術が業務システムに組み込まれるケースが増加の一途を辿っています。
この変革の過程で、多くの企業が直面しているのがシステム環境の複雑化という課題です。
オンプレミスで運用してきた基幹システムに加え、複数のクラウドサービス、SaaSアプリケーション、API連携などが複雑に絡み合い、全体像の把握や管理が困難になっています。このような複雑な環境下では、一部の障害が広範囲に影響を及ぼしたり、連携部分の不具合が業務全体を停止させたりするリスクが高まっています。
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1.2. 統合による効率化の追求と、増大するシステム障害リスク
複雑化したシステム環境に対処するため、多くの企業がシステムの統合に取り組んでいます。
データのサイロ化を解消し、業務プロセスを効率化することで、生産性の向上やコスト削減を目指す動きは必然と言えるでしょう。API連携やデータ連携基盤の構築は、まさにその取り組みの核心です。
しかしながら、システムの統合は、同時にシステム障害のリスクを増大させる可能性を秘めています。。。
緊密に連携されたシステムは、一部のコンポーネントの障害が連鎖的に他のシステムに波及しやすく、影響範囲が拡大する傾向があるのです。また、統合された環境は、障害箇所の特定や復旧作業を複雑にする可能性も否定できません。
1.3. 【独自の視点】単なる効率化では不十分。事業継続を左右する「攻め」と「守り」の統合的視点
このような状況を踏まえると、現代のクラウド戦略において、単にシステムの効率化を追求するだけでは不十分であると言わざるを得ません。
デジタル変革を推進し、競争力を高める「攻め」の側面と同時に、予期せぬ障害から事業を守り、迅速に回復する「守り」、すなわちレジリエンスを強化する視点が不可欠です。
「統合」と「レジリエンス」は、一見すると相反する概念のように捉えられがちです。
統合はシステムの依存性を高める可能性がある一方、レジリエンスはシステムの独立性を重視する側面があるためです。しかし、真に効果的なクラウド戦略とは、この二つの要素をトレードオフとして捉えるのではなく、高度なバランスを取り、両立させることを目指すものです。
例えば、マイクロサービスアーキテクチャを採用することで、個々のサービスは独立性を保ちながらも、APIを通じて有機的に連携し、全体として統合された機能を提供できます。また、IaC(Infrastructure as Code)を活用することで、インフラの構成管理を自動化し、障害発生時の迅速な復旧を実現できます。
2. システム統合とレジリエンス、それぞれの本質的な意味合いとは?
2.1. システム統合:サイロ化されたデータの解放と業務プロセスの最適化
システム統合とは、企業内に散在する複数のシステムやアプリケーション、データを連携させ、一元的に管理・活用できる状態を目指す取り組みです。
長年にわたる事業展開や部門ごとの個別最適化が進んだ結果、多くの企業では、顧客情報、販売データ、在庫情報、会計情報などが異なるシステムに分散し、いわゆる「データのサイロ化」が発生しています。
このデータのサイロ化は、以下のような課題を引き起こします。
データのサイロ化が生み出す様々な課題
- 情報の分断: 必要な情報がすぐに取り出せず、部門間の連携や意思決定の迅速化を妨げます。
- 重複データの発生: 同じデータが複数のシステムに存在し、データの不整合や管理コストの増大を招きます。
- 業務プロセスの非効率化: 異なるシステム間での手作業によるデータ転記や連携が必要となり、人的ミスや遅延が発生しやすくなります。
- 顧客体験の低下: 顧客に関する情報が統合されていないため、一貫性のあるパーソナライズされたサービスを提供することが困難になります。
システム統合は、これらの課題を解決し、企業の競争力を高めるための重要な戦略です。API(Application Programming Interface)連携、ETL(Extract, Transform, Load)ツール、エンタープライズサービスバス(ESB)などの技術を活用し、データの流れをスムーズにし、業務プロセスを自動化・最適化することで、以下のような効果が期待できます。
- データドリブンな意思決定: 統合されたデータに基づき、より正確で迅速な意思決定が可能になります。
- 業務効率の向上: 手作業によるデータ連携が減少し、人的リソースをより付加価値の高い業務に集中させることができます。
- 顧客体験の向上: 統合された顧客情報に基づき、パーソナライズされたサービスを提供することで、顧客満足度を高めることができます。
- 新たなビジネス価値の創出: 異なるデータを組み合わせることで、これまで見過ごされてきた新たな洞察やビジネスチャンスを発見できる可能性があります。
2.2. レジリエンス:予期せぬ障害からの迅速な回復と事業継続性の確保
レジリエンスとは、システムや組織が予期せぬ障害や中断が発生した場合でも、その影響を最小限に抑え、速やかに通常の運用状態に回復する能力を指します。クラウド環境においては、インフラストラクチャの障害、ソフトウェアのバグ、セキュリティインシデント、自然災害など、様々な要因によってシステムが停止するリスクが存在します。
システムが停止した場合、企業のビジネス活動は大きな影響を受けます。売上の損失、顧客からの信頼失墜、ブランドイメージの低下など、その影響は計り知れません。特に、現代のビジネスにおいて、ITシステムは社会インフラと同等の重要性を持つようになっており、わずかなダウンタイムも許容されないケースが増えています。
レジリエンスを確保するための対策には、以下のようなものが挙げられます。
- 冗長化: 主要なハードウェアやソフトウェアコンポーネントを二重化し、障害発生時に自動的に切り替わるように構成します。
- 高可用性(HA): システムが継続的に利用可能な状態を維持するための設計や構成を行います。
- ディザスタリカバリ(DR): 自然災害などの大規模な障害が発生した場合に、別の場所に用意された環境にシステムを速やかに復旧させるための計画と体制を整備します。
- バックアップと復旧: 重要なデータを定期的にバックアップし、障害発生時に迅速に復旧できるようにします。
- 監視とアラート: システムの状態を常に監視し、異常を早期に検知して対応するための仕組みを構築します。
- インシデントレスポンス: 障害発生時の対応手順や責任者を明確化し、迅速かつ適切な対応を行うための体制を整備します。
2.3. 統合とレジリエンスは相反する概念なのか?両立の鍵となる考え方
前述の通り、システム統合はシステムの依存性を高める可能性があり、レジリエンスはシステムの独立性を重視する側面があります。そのため、「統合」と「レジリエンス」は相反する概念のように捉えられることがあります。
しかし、両者は決して排他的なものではなく、適切な設計思想と技術を用いることで、十分に両立させることが可能です。その鍵となる考え方は、「依存性の管理」と「障害の局所化」です。
システムの統合を進める際には、コンポーネント間の依存性を可能な限り低く保つ設計(疎結合)を採用することが重要です。
例えば、マイクロサービスアーキテクチャは、個々のサービスが独立して動作し、APIを通じて連携するため、一部のサービスに障害が発生しても、他のサービスへの影響を最小限に抑えることができます。
また、障害が発生した場合の影響範囲を局所化するための仕組みを組み込むことも重要です。サーキットブレーカーパターンやバルクヘッドパターンなどの設計パターンを活用することで、障害の連鎖的な波及を防ぎ、システム全体の安定性を高めることができます。
さらに、インフラレベルでの冗長化や高可用性構成、自動フェイルオーバーの仕組みなどを適切に導入することで、統合された環境においても高いレジリエンスを確保することが可能です。
次回は、これらの考え方を具体的に実現するための実践的なアプローチについて詳しく解説していきます。
APPSWINGBYでは、システムの開発以外にもシステムの再設計・最適化、リファクタリング、リアーキテクチャによるクラウドネイティブ化など、お客様のデジタル変革を支援する幅広いサービスを提供しております。システムと事業の進化を見据えた「統合」や「レジリエンス」についてご関心をお持ちでしたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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この記事を書いた人

株式会社APPSWINGBY マーケティング
APPSWINGBY(アップスイングバイ)は、アプリケーション開発事業を通して、お客様のビジネスの加速に貢献することを目指すITソリューションを提供する会社です。
ご支援業種
情報・通信、医療、製造、金融(銀行・証券・保険・決済)、メディア、流通・EC・運輸 など多数

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監修

株式会社APPSWINGBY CTO 川嶋秀一
動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。

株式会社APPSWINGBY CTO 川嶋秀一
動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。