2025年テクノロジー業界のマクロトレンド:進化するIaC
- 1. はじめに
- 1.1. IaC(Infrastructure as Code)の重要性の再確認
- 1.2. 2025年にIaCが注目される背景
- 1.3. 本記事の目的と概要:進化するIaCの全体像を把握する
- 2. 第一章 IaCの現状と課題
- 2.1.1. 従来のIaCのメリットと限界:宣言的アプローチと手続き的アプローチの比較
- 2.1.2. 現在のIaCツール(Terraform、CloudFormation、Ansibleなど)の課題:複雑性、状態管理、セキュリティリスク
- 2.1.3. インフラストラクチャの複雑化:マルチクラウド、ハイブリッドクラウド、エッジコンピューティングの普及
- 2.1.4. 開発プロセスの変化:DevOps、GitOps、Platform Engineeringの進化
はじめに
IaC(Infrastructure as Code)の重要性の再確認
IaC(Infrastructure as Code)とは、インフラストラクチャをコードとして記述し、管理する手法です。従来の手動によるインフラストラクチャ構築・管理と比較して、自動化、再現性、バージョン管理、テスト容易性など、多くのメリットを提供します。これにより、インフラストラクチャのデプロイと変更を迅速かつ安全に行うことが可能となり、DevOpsやアジャイル開発の実現に不可欠な要素となっています。
具体的には、以下のような利点があります。
- 自動化: 手作業による設定ミスを削減し、一貫性のあるインフラストラクチャ構築を実現します。
- バージョン管理: Gitなどのバージョン管理システムを利用することで、インフラストラクチャの変更履歴を追跡し、ロールバックが容易になります。
- 再現性: 同じコードを用いて、開発環境、テスト環境、本番環境など、異なる環境に同じインフラストラクチャを構築できます。
- テスト容易性: コードとして記述されているため、インフラストラクチャのテストを自動化できます。
- コラボレーション: コードレビューなどを通じて、チームでの共同作業が容易になります。
これらの利点は、現代の複雑なIT環境において、ビジネスの俊敏性を高め、運用コストを削減するために非常に重要です。
2025年にIaCが注目される背景
2025年においてIaCが特に注目される背景には、ITインフラストラクチャと開発環境の急速な変化があります。
- クラウドネイティブの普及: コンテナ、マイクロサービス、サーバーレスなど、クラウドネイティブ技術の普及により、インフラストラクチャはますます複雑化しています。IaCは、このような複雑なインフラストラクチャを効率的に管理するための必須ツールとなっています。
- マルチクラウドとハイブリッドクラウドの増加: 複数のクラウドプロバイダーを利用するマルチクラウド環境や、オンプレミスとクラウドを組み合わせたハイブリッドクラウド環境が増加しており、インフラストラクチャの管理はさらに複雑になっています。IaCは、これらの異なる環境に一貫性のあるインフラストラクチャを提供するための重要な役割を果たします。
- エッジコンピューティングの台頭: IoTデバイスの普及や低レイテンシの要求の高まりにより、エッジコンピューティングが注目されています。分散されたエッジ環境を効率的に管理するためにも、IaCは不可欠です。
- DevOps/GitOpsの進化: 開発と運用が連携するDevOpsや、Gitリポジトリを中心とした運用手法であるGitOpsの進化により、インフラストラクチャの変更管理はより自動化され、高速化されています。IaCは、これらのプラクティスを支える基盤となっています。
- Platform Engineeringの隆盛: 開発者がインフラストラクチャの詳細を意識せずにアプリケーション開発に集中できるようにするPlatform Engineeringの概念が普及しています。IaCは、プラットフォームチームが開発者向けのセルフサービスインフラストラクチャを提供する上で重要な役割を果たします。
これらの変化は、従来のインフラストラクチャ管理手法では対応が難しくなってきていることを示しています。IaCは、これらの課題を解決し、現代のIT環境において必要不可欠な技術となっています。
本記事の目的と概要:進化するIaCの全体像を把握する
本記事では、2025年に注目すべきIaCの進化に焦点を当て、その全体像を把握することを目的としています。具体的には、以下の内容を解説します。
- 従来のIaCの課題と限界
- 自動化とAIの統合、セキュリティの組み込み、プラットフォームエンジニアリングとの融合など、IaCの進化の方向性
- 主要クラウドプロバイダーやオープンソースプロジェクトの先進的な取り組み事例
- IaCの未来展望と、企業がどのように対応すべきか
本記事を通じて、読者はIaCの最新動向を理解し、今後のインフラストラクチャ戦略に役立てることができるでしょう。特に、2025年以降を見据えた上で、IaCがどのように進化し、ビジネスにどのような影響を与えるのかを理解することを目的としています。
第一章 IaCの現状と課題
従来のIaCのメリットと限界:宣言的アプローチと手続き的アプローチの比較
IaCには、大きく分けて「宣言的アプローチ」と「手続き的アプローチ」の2種類が存在します。それぞれのメリットと限界を理解することは、IaCの進化を理解する上で重要です。
- 宣言的アプローチ(例:Terraform、CloudFormation):
- メリット:
- 冪等性: 目的の状態を記述するため、何度実行しても結果が同じになります。
- 状態管理: 現在のインフラストラクチャの状態を管理し、変更を追跡できます。
- 簡潔な記述: 目的の状態を記述するだけでよいため、コードが簡潔になりやすいです。
- 限界:
- 複雑なロジックの表現が難しい: 複雑な条件分岐やループなどを表現するのが苦手です。
- 状態管理の複雑さ: 状態ファイルが肥大化したり、破損したりするリスクがあります。
- メリット:
- 手続き的アプローチ(例:Ansible、Chef、Puppet):
- メリット:
- 柔軟な制御: 複雑なロジックや条件分岐などを自由に記述できます。
- 既存システムとの連携: 既存のスクリプトやツールと連携しやすいです。
- 限界:
- 冪等性の確保が難しい: 冪等性を意識した記述が必要となり、コードが複雑になりやすいです。
- 状態管理が難しい: 状態を明示的に管理する必要があり、複雑になりやすいです。
- メリット:
近年では、宣言的アプローチが主流となっていますが、状況に応じて適切なアプローチを選択することが重要です。また、両者の良い点を組み合わせるようなツールやプラクティスも登場しています。
現在のIaCツール(Terraform、CloudFormation、Ansibleなど)の課題:複雑性、状態管理、セキュリティリスク
現在のIaCツールは多くのメリットを提供する一方で、いくつかの課題も抱えています。
- 複雑性: インフラストラクチャが複雑化するにつれて、IaCのコードも複雑になり、管理が難しくなっています。特に、大規模なインフラストラクチャや複数のクラウド環境を管理する場合、コードの可読性や保守性が低下する傾向があります。
- 状態管理: Terraformなどのツールでは、状態ファイルを管理する必要があります。この状態ファイルが破損したり、意図しない変更が加えられたりすると、インフラストラクチャに不整合が生じる可能性があります。また、複数のチームで状態ファイルを共有する場合、コンフリクトが発生するリスクもあります。
- セキュリティリスク: IaCのコードにセキュリティ上の脆弱性があると、インフラストラクチャ全体が危険にさらされる可能性があります。また、機密情報(APIキー、パスワードなど)をコード内に直接記述すると、情報漏洩のリスクがあります。
- テストの難しさ: IaCのコードをテストすることは、従来のソフトウェアテストに比べて難しいです。インフラストラクチャの変更が他のシステムに影響を与える可能性があるため、テスト環境の構築やテストケースの設計が複雑になります。
- ドリフトの検出: 実際のインフラストラクチャの状態がIaCのコードと乖離する「ドリフト」が発生する場合があります。このドリフトを検出し、修正するプロセスも課題となります。
これらの課題に対処するために、IaCツール自体も進化を続けており、様々なソリューションやベストプラクティスが提案されています。
インフラストラクチャの複雑化:マルチクラウド、ハイブリッドクラウド、エッジコンピューティングの普及
近年、インフラストラクチャはますます複雑化しています。
- マルチクラウド: 複数のクラウドプロバイダー(AWS、Azure、GCPなど)を利用する企業が増えています。これにより、各クラウドプロバイダー固有のIaCツールやAPIを使い分ける必要があり、管理が複雑になります。
- ハイブリッドクラウド: オンプレミス環境とクラウド環境を組み合わせて利用する企業も多く、インフラストラクチャの管理はさらに複雑になっています。異なる環境間での連携や整合性を保つことが課題となります。
- エッジコンピューティング: IoTデバイスの普及や低レイテンシの要求の高まりにより、エッジコンピューティングが注目されています。分散されたエッジ環境を効率的に管理するためには、従来のクラウド中心のIaCとは異なるアプローチが必要となります。
これらの複雑な環境に対応するために、クロスプラットフォーム対応のIaCツールや、クラウドネイティブ技術との連携が重要になっています。
開発プロセスの変化:DevOps、GitOps、Platform Engineeringの進化
開発プロセスも変化しており、IaCに大きな影響を与えています。
- DevOps: 開発と運用が連携するDevOpsの普及により、インフラストラクチャの変更も開発プロセスの一部として扱われるようになりました。IaCは、DevOpsを実現するための重要な要素となっています。
- GitOps: Gitリポジトリを中心とした運用手法であるGitOpsは、インフラストラクチャの変更をGitのプルリクエストなどを通じて管理します。IaCは、GitOpsを実現するための基盤となっています。
- Platform Engineering: 開発者がインフラストラクチャの詳細を意識せずにアプリケーション開発に集中できるようにするPlatform Engineeringの概念が普及しています。IaCは、プラットフォームチームが開発者向けのセルフサービスインフラストラクチャを提供する上で重要な役割を果たします。
これらの変化に伴い、IaCは単なるインフラストラクチャの自動化ツールではなく、開発プロセス全体を支える重要な要素となっています。
この章では、IaCの現状と課題について解説しました。次回の記事では、これらの課題を克服し、進化するIaCの具体的な方向性について解説します。
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この記事を書いた人
株式会社APPSWINGBY マーケティング
APPSWINGBY(アップスイングバイ)は、アプリケーション開発事業を通して、お客様のビジネスの加速に貢献することを目指すITソリューションを提供する会社です。
ご支援業種
情報・通信、医療、製造、金融(銀行・証券・保険・決済)、メディア、流通・EC・運輸 など多数
監修
株式会社APPSWINGBY
CTO 川嶋秀一
動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。