Cloud Repatriation 2.0とは

Cloud Repatriation 2.0とは

Cloud Repatriation 2.0をご存じでしょうか? 今回は先行している海外で話題になっている「Cloud Repatriation 2.0」についてご紹介します。

Cloud Repatriation 2.0とは

Cloud Repatriation 2.0とは、従来のクラウドリパトリエーション(クラウドからオンプレミスへの回帰)が進化した概念で、単純な「クラウドからの撤退」ではなく、より戦略的で洗練されたハイブリッド・マルチクラウドアプローチを指したワードです。

従来のリパトリエーション(回帰)との違い

従来のCloud Repatriation(1.0)は、従量課金によるコストの急な上昇といった財務的なことが理由で起こった回帰で、コスト削減を主目的とした単純なクラウドからオンプレミスへの移行が起こったものでした。

しかし、コストを削減だけを主眼においた一方向的な移行は、運用コストと作業工数、トラブルの頻発などの技術的負債を生む結果になり、多くの企業ではクラウドの利用料金を上回るコストを生む結果となったものでした。

今回新たなムーブメントとして起こっているCloud Repatriation 2.0は、データ主権、パフォーマンス、コスト最適化を総合的に考慮しつつ、動的なワークロードをどこに割り当てれば最適なのか、割り当てる理由はどのような理由などかを考慮した後に、配置していこうという試みです。継続的な最適化プロセスと言ってもいいかもしれません。

主要な推進要因

1. Cloud Repatriation 2.0 における経済的背景と要因

Cloud Repatriation 2.0における経済的要因を少し分析してみます。

Cloud Repatriation 2.0 とは、前述した通りですが、クラウドに移行したシステムやワークロードを、再びオンプレミス(自社運用環境)やプライベートクラウドに戻す動きの新しい潮流を指します。その背景には、単なるコスト削減では説明しきれない、より複雑で構造的な経済要因があります。

一言で言うと、多くの企業が当初想定していたクラウドの経済的メリットと実際の運用コストの間に大きな乖離があったことを多くの企業・担当者が経験していることが主な背景となってでてきた概念です。

想定と現実のギャップ

クラウドサービスの料金体系は従量課金制を基本としているため、初期段階では確かにコスト効率的に見えます。

しかし、企業のデジタル化が進展し、データ量やトラフィック量が指数関数的に増加すると、予想を大幅に上回る請求額に直面することが頻繁に発生しています。特に、データ転送料金、ストレージコスト、コンピューティングリソースの長期利用において、クラウドプロバイダーの価格体系が企業の成長とスケールに比例して急激に高額化する傾向があります。

さらに、CPU集約的な処理やメモリを大量に消費するワークロード、継続的に稼働する基幹システムにおいては、オンプレミスでの専用ハードウェア投資の方が長期的なTCOで優位性を示すケースが増加しています。これは、クラウドのマルチテナント環境でのリソース共有によるオーバーヘッドや、クラウドプロバイダーの利益率が上乗せされることによる構造的な価格差に起因しています。

また、ライセンス費用の問題も重要な経済的要因となっています。

既存のエンタープライズソフトウェアライセンスをクラウド環境で利用する際の複雑な料金体系や、クラウド専用ライセンスの高額化により、予期せぬコスト増加に直面する企業が多数存在します。これらの複合的な経済的圧迫が、より戦略的なワークロード配置の見直しを促進しています。

ライセンス費用の複雑化

ライセンスについても簡単にまとめておきます。

既存のエンタープライズソフトウェアライセンスをクラウド環境で使う場合、以下のような問題が発生します。

  • オンプレミスと異なる複雑な課金体系
  • クラウド専用ライセンスの高額化
  • 既存ライセンスがクラウド利用に適用できず、二重支払いになるケース

こうした予期せぬライセンスコストの増加も原因となり、海外の一部の企業を中心に、クラウドからオンプレミスへの回帰を後押した現象が発生しました。

経済的背景と要因まとめ
  • クラウド料金の予想以上の増大
  • 長期的なTCO(Total Cost of Ownership)の見直し
  • CPU・メモリ集約的なワークロードでのコスト効率性

Cloud Repatriation 2.0 の経済的要因は「クラウド料金の高騰」「利用規模拡大による予測不能なコスト増」「特定ワークロードでのオンプレ優位性」「ライセンス費用の複雑化」といった複合的な背景から成り立っています。そのため、企業は単に「クラウドかオンプレか」という二択ではなく、ワークロードごとに最適な配置戦略を再設計する段階に入っていると言えるでしょう。

2. Cloud Repatriation 2.0 における技術的要因

Cloud Repatriation 2.0 における技術的な要因は、大きく分けて 性能面での制約企業の高度化する技術要件 から構成されます。クラウドサービスの成熟に伴い、当初は見えなかった限界やボトルネックが明らかになり、ワークロードの再配置を促す動きが強まったという背景があります。

1. レイテンシー(遅延)要件の厳格化

近年、リアルタイム処理が求められるアプリケーション が増加しています。例として、

  • 融取引システム(株取引、決済)
  • 製造業の制御系システム(工場ラインの制御)
  • オンラインゲームプラットフォーム
  • リアルタイム映像配信サービス

これらでは、数ミリ秒の遅延 が業務や体験の質に直結します。
しかし、パブリッククラウドの共有インフラ環境では、ネットワーク経路の変動やリソース共有の影響により、常に安定した超低遅延 を確保するのが難しい場合があります。

そのため、

  • 地理的に近い場所にサーバーを設置する オンプレミス環境
  • ユーザーやデバイスに近い場所で処理を行う エッジコンピューティング
    といった構成が選ばれるケースが増えています。

2. データ処理量の爆発的増加

IoTの普及高解像度映像コンテンツ各種センサーデータの常時収集 などにより、企業が扱うデータ量は毎年指数関数的に増加しています…

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この記事を書いた人
株式会社APPSWINGBY
株式会社APPSWINGBY マーケティング

APPSWINGBY(アップスイングバイ)は、アプリケーション開発事業を通して、お客様のビジネスの加速に貢献することを目指すITソリューションを提供する会社です。

ご支援業種

情報・通信、医療、製造、金融(銀行・証券・保険・決済)、メディア、流通・EC・運輸 など多数

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監修
APPSWINGBY CTO川嶋秀一
株式会社APPSWINGBY  CTO 川嶋秀一

動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。

APPSWINGBY CTO川嶋秀一
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動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
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