Delta Lakeの基本から応用まで:データレイクハウスの構築と活用

Delta Lakeの基本から応用まで:データレイクハウスの構築と活用

データ活用が企業の競争優位性を左右する現代において、データの蓄積・管理・分析の基盤は非常に重要です。

近年、データレイクとデータウェアハウスの利点を組み合わせた「データレイクハウス」というアーキテクチャが注目されています。その中心的な役割を担うのが、オープンソースのストレージレイヤーである Delta Lake です。

本記事では、Delta Lakeの基本的な概念から、実際のデータレイクハウス構築における応用的な活用方法まで、詳しく解説します。

データレイクの課題とDelta Lakeがもたらす革新

1. データレイクの現状と課題

企業が扱うデータは、構造化データ(データベース)、非構造化データ(画像、音声)、半構造化データ(JSON、XML)など多岐にわたります。

これら全てのデータを安価かつ柔軟に蓄積する場所として、Amazon S3やAzure Blob Storageといったオブジェクトストレージ上に構築される「データレイク」が広く利用されてきました。

しかし、データレイクには以下のような技術的な課題が存在します。

ACIDトランザクションの欠如

複数のユーザーが同時にデータを読み書きする際に、一貫性(Consistency)や隔離性(Isolation)が保証されず、データの破損や不整合が発生する可能性があります。

特に、バッチ処理とストリーミング処理が混在する環境では、この問題が顕著になります。

スキーマ管理の難しさ

データレイクに格納されるデータはスキーマが不定形であることが多く、スキーマの変更や整合性のチェックが困難です。これにより、データの品質低下や後続の分析処理におけるエラーを引き起こす可能性があります。

パフォーマンスの課題

大量の小さなファイルを扱う場合、ファイルシステムのスキャンに時間がかかり、クエリパフォーマンスが低下します。また、データの追加や更新、削除といった操作が非効率的です。

2. Delta Lakeとは何か?

Delta Lakeは、データレイク上に構築されるオープンソースのストレージレイヤーであり、データレイクに信頼性、セキュリティ、パフォーマンス、そしてACIDトランザクションをもたらします。

これにより、データレイクがデータウェアハウスの機能も兼ね備える「データレイクハウス」アーキテクチャの実現を可能にします。

Delta Lakeの核心は、Parquet形式でデータを保存しつつ、トランザクションログ(Delta Log)を別途管理する点にあります。このトランザクションログには、データの追加、更新、削除といった全ての変更履歴が記録されており、これによりACIDトランザクションを保証します。

Delta Lakeの主要機能と技術的優位性

Delta Lakeがデータレイクの課題をどのように解決し、技術的な優位性をもたらすのか、その主要な機能を見ていきましょう。

1. ACIDトランザクション

Delta Lakeの最も重要な機能は、ACID特性(Atomicity, Consistency, Isolation, Durability)をサポートすることです。

これにより、複数の書き込み操作が同時に実行されても、データの整合性が保たれます。これは、特にストリーミングデータや複数のデータパイプラインが同じテーブルに書き込む場合に不可欠な機能です。

2. タイムトラベル(Time Travel)

Delta Lakeのトランザクションログは、データの変更履歴を全て記録しているため、任意の過去の時点の状態にデータを復元することができます。この機能を「タイムトラベル」と呼びます。

この機能は、以下のようなユースケースで非常に有用です。

  • データ監査: 過去のデータがどのように変更されたかを確認できます。
  • 誤った操作からの復旧: 誤って削除・更新したデータを簡単に元に戻すことができます。
  • 過去データの再現: 特定の時点のデータセットを使って機械学習モデルを再学習させたり、レポートを再生成したりすることができます。

3. スキーマ適用(Schema Enforcement)とスキーマ進化(Schema Evolution)

スキーマ適用(Schema Enforcement)

Delta Lakeは、テーブルに書き込まれるデータのスキーマを自動的に検証し、既存のスキーマと互換性がない場合は書き込みをブロックします。これにより、不正なデータが混入するのを防ぎ、データ品質を維持します。

スキーマ進化(Schema Evolution)

一方で、ビジネス要件の変更に伴いスキーマを変更する必要がある場合、mergeSchemaオプションを使用することで、スキーマを自動的に更新できます。これにより、データの柔軟性を保ちつつ、厳格なスキーマ管理が両立できます。

4. 高速なクエリパフォーマンス

Delta Lakeは、データファイルをParquet形式で保存するため、列指向ストレージのメリットを享受できます。さらに、以下のような機能により、クエリパフォーマンスを大幅に向上させます。

データのスキップ(Data Skipping)

トランザクションログに各ファイルの最小値・最大値などの統計情報を保存し、クエリに必要なファイルだけを読み込むことで、不要なI/Oを削減します。

Z-Ordering

複数の次元を持つデータをZ-Order曲線に基づいて並べ替えることで、関連性の高いデータを物理的に近くに配置し、より効率的なデータスキッピングを可能にします。

Delta Lakeの応用と今後の展望

Delta Lakeは、単なるストレージレイヤーを超え、データレイクハウスアーキテクチャの心臓部として、様々なユースケースで活用されています。

バッチ処理とストリーミング処理の統合

ストリーミングデータ(IoTデータ、クリックストリームなど)をDelta Lakeに直接取り込み、リアルタイムで集計・分析を行う一方、同じデータセットに対して定期的なバッチ処理を実行することができます。

機械学習とAI

タイムトラベル機能により、モデル学習用のデータセットを過去の任意の時点に固定することができます。これにより、モデルの再現性を確保し、MLOps(Machine Learning Operations)を効率的に推進できます。

BI(Business Intelligence)レポート作成

BIツールから直接Delta Lake上のデータにアクセスし、高速かつ信頼性の高いレポートを作成できます。

今後の展望としては、Delta Lakeはオープンソースコミュニティを中心に、より多くのデータ処理エンジン(Presto、Trinoなど)との連携が進み、エコシステムがさらに拡大していくでしょう。また、リアルタイム処理のさらなる高速化や、高度なガバナンス機能の追加など、企業におけるミッションクリティカルなデータ基盤としての役割をより強固なものにしていくと考えられます。

APPSWINGBYは、最先端の技術の活用と、お客様のビジネスに最適な形で実装する専門知識を有しております。貴社がこの技術革新の波を活用し、競争優位性を確立できるようデータレイクハウス、データ分析基盤の開発から業務システムの全体設計・開発、既存システムの改修(リファクタリング、リアーキテクチャ)、DevOps環境の構築、ハイブリッドクラウド環境の構築、技術サポートなど提供しています。サイト、システムの一新をお考えでしたら、弊社お問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。

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株式会社APPSWINGBY
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APPSWINGBY(アップスイングバイ)は、アプリケーション開発事業を通して、お客様のビジネスの加速に貢献することを目指すITソリューションを提供する会社です。

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情報・通信、医療、製造、金融(銀行・証券・保険・決済)、メディア、流通・EC・運輸 など多数

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監修
APPSWINGBY CTO川嶋秀一
株式会社APPSWINGBY  CTO 川嶋秀一

動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。

APPSWINGBY CTO川嶋秀一
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動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
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