Delta Lakeの基本から応用まで:データレイクハウスの構築と活用

データ活用が企業の競争優位性を左右する現代において、データの蓄積・管理・分析の基盤は非常に重要です。
近年、データレイクとデータウェアハウスの利点を組み合わせた「データレイクハウス」というアーキテクチャが注目されています。その中心的な役割を担うのが、オープンソースのストレージレイヤーである Delta Lake です。
本記事では、Delta Lakeの基本的な概念から、実際のデータレイクハウス構築における応用的な活用方法まで、詳しく解説します。
- 1. データレイクの課題とDelta Lakeがもたらす革新
- 1.1. 1. データレイクの現状と課題
- 1.1.1. ACIDトランザクションの欠如
- 1.1.2. スキーマ管理の難しさ
- 1.1.3. パフォーマンスの課題
- 1.2. 2. Delta Lakeとは何か?
- 2. Delta Lakeの主要機能と技術的優位性
- 2.1. 1. ACIDトランザクション
- 2.2. 2. タイムトラベル(Time Travel)
- 2.3. 3. スキーマ適用(Schema Enforcement)とスキーマ進化(Schema Evolution)
- 2.3.1. スキーマ適用(Schema Enforcement)
- 2.3.2. スキーマ進化(Schema Evolution)
- 2.4. 4. 高速なクエリパフォーマンス
- 2.4.1. データのスキップ(Data Skipping)
- 2.4.2. Z-Ordering
- 3. Delta Lakeの応用と今後の展望
- 3.1.1. バッチ処理とストリーミング処理の統合
- 3.1.2. 機械学習とAI
- 3.1.3. BI(Business Intelligence)レポート作成
データレイクの課題とDelta Lakeがもたらす革新
1. データレイクの現状と課題
企業が扱うデータは、構造化データ(データベース)、非構造化データ(画像、音声)、半構造化データ(JSON、XML)など多岐にわたります。
これら全てのデータを安価かつ柔軟に蓄積する場所として、Amazon S3やAzure Blob Storageといったオブジェクトストレージ上に構築される「データレイク」が広く利用されてきました。
しかし、データレイクには以下のような技術的な課題が存在します。
ACIDトランザクションの欠如
複数のユーザーが同時にデータを読み書きする際に、一貫性(Consistency)や隔離性(Isolation)が保証されず、データの破損や不整合が発生する可能性があります。
特に、バッチ処理とストリーミング処理が混在する環境では、この問題が顕著になります。
スキーマ管理の難しさ
データレイクに格納されるデータはスキーマが不定形であることが多く、スキーマの変更や整合性のチェックが困難です。これにより、データの品質低下や後続の分析処理におけるエラーを引き起こす可能性があります。
パフォーマンスの課題
大量の小さなファイルを扱う場合、ファイルシステムのスキャンに時間がかかり、クエリパフォーマンスが低下します。また、データの追加や更新、削除といった操作が非効率的です。
2. Delta Lakeとは何か?
Delta Lakeは、データレイク上に構築されるオープンソースのストレージレイヤーであり、データレイクに信頼性、セキュリティ、パフォーマンス、そしてACIDトランザクションをもたらします。
これにより、データレイクがデータウェアハウスの機能も兼ね備える「データレイクハウス」アーキテクチャの実現を可能にします。
Delta Lakeの核心は、Parquet形式でデータを保存しつつ、トランザクションログ(Delta Log)を別途管理する点にあります。このトランザクションログには、データの追加、更新、削除といった全ての変更履歴が記録されており、これによりACIDトランザクションを保証します。
Delta Lakeの主要機能と技術的優位性
Delta Lakeがデータレイクの課題をどのように解決し、技術的な優位性をもたらすのか、その主要な機能を見ていきましょう。
1. ACIDトランザクション
Delta Lakeの最も重要な機能は、ACID特性(Atomicity, Consistency, Isolation, Durability)をサポートすることです。
これにより、複数の書き込み操作が同時に実行されても、データの整合性が保たれます。これは、特にストリーミングデータや複数のデータパイプラインが同じテーブルに書き込む場合に不可欠な機能です。
2. タイムトラベル(Time Travel)
Delta Lakeのトランザクションログは、データの変更履歴を全て記録しているため、任意の過去の時点の状態にデータを復元することができます。この機能を「タイムトラベル」と呼びます。
この機能は、以下のようなユースケースで非常に有用です。
- データ監査: 過去のデータがどのように変更されたかを確認できます。
- 誤った操作からの復旧: 誤って削除・更新したデータを簡単に元に戻すことができます。
- 過去データの再現: 特定の時点のデータセットを使って機械学習モデルを再学習させたり、レポートを再生成したりすることができます。
3. スキーマ適用(Schema Enforcement)とスキーマ進化(Schema Evolution)
スキーマ適用(Schema Enforcement)
Delta Lakeは、テーブルに書き込まれるデータのスキーマを自動的に検証し、既存のスキーマと互換性がない場合は書き込みをブロックします。これにより、不正なデータが混入するのを防ぎ、データ品質を維持します。
スキーマ進化(Schema Evolution)
一方で、ビジネス要件の変更に伴いスキーマを変更する必要がある場合、mergeSchema
オプションを使用することで、スキーマを自動的に更新できます。これにより、データの柔軟性を保ちつつ、厳格なスキーマ管理が両立できます。
4. 高速なクエリパフォーマンス
Delta Lakeは、データファイルをParquet形式で保存するため、列指向ストレージのメリットを享受できます。さらに、以下のような機能により、クエリパフォーマンスを大幅に向上させます。
データのスキップ(Data Skipping)
トランザクションログに各ファイルの最小値・最大値などの統計情報を保存し、クエリに必要なファイルだけを読み込むことで、不要なI/Oを削減します。
Z-Ordering
複数の次元を持つデータをZ-Order曲線に基づいて並べ替えることで、関連性の高いデータを物理的に近くに配置し、より効率的なデータスキッピングを可能にします。
Delta Lakeの応用と今後の展望
Delta Lakeは、単なるストレージレイヤーを超え、データレイクハウスアーキテクチャの心臓部として、様々なユースケースで活用されています。
バッチ処理とストリーミング処理の統合
ストリーミングデータ(IoTデータ、クリックストリームなど)をDelta Lakeに直接取り込み、リアルタイムで集計・分析を行う一方、同じデータセットに対して定期的なバッチ処理を実行することができます。
機械学習とAI
タイムトラベル機能により、モデル学習用のデータセットを過去の任意の時点に固定することができます。これにより、モデルの再現性を確保し、MLOps(Machine Learning Operations)を効率的に推進できます。
BI(Business Intelligence)レポート作成
BIツールから直接Delta Lake上のデータにアクセスし、高速かつ信頼性の高いレポートを作成できます。
今後の展望としては、Delta Lakeはオープンソースコミュニティを中心に、より多くのデータ処理エンジン(Presto、Trinoなど)との連携が進み、エコシステムがさらに拡大していくでしょう。また、リアルタイム処理のさらなる高速化や、高度なガバナンス機能の追加など、企業におけるミッションクリティカルなデータ基盤としての役割をより強固なものにしていくと考えられます。
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この記事を書いた人

株式会社APPSWINGBY マーケティング
APPSWINGBY(アップスイングバイ)は、アプリケーション開発事業を通して、お客様のビジネスの加速に貢献することを目指すITソリューションを提供する会社です。
ご支援業種
情報・通信、医療、製造、金融(銀行・証券・保険・決済)、メディア、流通・EC・運輸 など多数

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監修

株式会社APPSWINGBY CTO 川嶋秀一
動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。

株式会社APPSWINGBY CTO 川嶋秀一
動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。