DX推進におけるシステム内製化の課題
DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する企業において、システム開発を内製化する動きが近年活発化しています。これは、ビジネス環境の変化に迅速に対応し、競争力を強化するために、システム開発のスピードと柔軟性を向上させる必要性が高まっているためです。
しかし、システム内製化は多くの課題も抱えており、導入企業は様々な問題に直面しています。本記事では、システム開発を内製化した企業が抱える問題や課題について調査し、その解決策を検討します。
システム内製化の現状
かつて、多くの企業はシステム開発を外部の専門企業に委託していました。しかし、DXの進展に伴い、ビジネスニーズの変化に迅速に対応できるシステム開発体制が求められるようになり、内製化を目指し、社内にシステム部門を設立する企業が増えていきました。
システム内製化における課題
内製化のメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
- 迅速な開発: 外部委託に比べて、開発期間を短縮できる。
- 柔軟な対応: ビジネスニーズの変化に柔軟に対応できる。
- コスト削減: 外部委託費用を削減できる。
- ノウハウの蓄積: システム開発のノウハウを社内に蓄積できる。
- 人材育成: IT人材を育成できる。
- セキュリティ強化: 機密情報の漏洩リスクを低減できる。
システム開発、運用管理などの内製化は、上記にあげたメリットが目立ち、一見する会社にとってメリットが大きいように見えがちですが、内製化してみて初めて見えてくる課題、デメリットもあり、多くの企業では内製化による課題が今問題視されています。
課題1:人材不足
システム内製化を成功させるためには、高度な専門的ITスキルを持つ人材が必要です。しかし、日本ではIT人材が慢性的に不足しており、多くの企業は必要な人材を確保するのに苦労しています。
- 不足するIT人材: 経済産業省の調査によると、2030年には最大79万人のIT人材が不足すると予測されています。
- 人材獲得競争の激化: 優秀なIT人材は、待遇の良い大手企業や外資系企業に流れてしまう傾向があります。
- 育成の難しさ: ITスキルは変化が激しいため、人材の育成には継続的な投資が必要になります。
- 専門知識や経験の不足:すべての企業が目指すだろう高品質且つ生産性が高いモダンなシステムをつくり上げる為には、最先端技術の理解やシステムアーキテクチャ、コーディング能力、その他、専門のドメイン知識が必要になりますが、日本国内においてそれら全てにおいて高い専門知識や経験を持つエンジニアの確保または育成が非常に困難な状況になっています。
課題2:コスト増加
システム内製化は、初期費用を抑えられるというメリットがある一方、人件費や設備投資などのランニングコストがかかります。そのため、十分な投資対効果(ROI)を得られない可能性があります。また、スキルの不足から余計なクラウドサービスの利用などによるコスト増加に悩まされている企業も増えてきています。
- 人件費の増加: IT人材の採用や育成には、多額の費用がかかります。
- 設備投資: 開発環境やセキュリティ対策などの設備投資が必要です。
- 運用・保守費用: システムの運用・保守にも費用がかかります。
クラウドの世界では以前からマイクロサービスが全盛ですが、人材の確保から育成、技術、経験などに大きな課題を抱える企業が増えている現状を考えると、少し不思議な状況になっているのかなぁ、、、と思う時がたまにあります。
課題3:プロジェクト管理の難しさ
システム開発プロジェクトは、規模が大きくなればなるほど、管理が難しくなります。内製化の場合、プロジェクト管理の経験を持つ人材が不足しているため、プロジェクトが遅延したり、予算をオーバーしたりするリスクが高まります。
- 経験不足: プロジェクト管理の経験を持つ人材が不足している。
- コミュニケーション不足: 開発チーム内や関係部署とのコミュニケーション不足による、認識のずれや手戻りが発生する。
- 品質管理の難しさ: 品質管理体制が整っていないため、システムの品質が低下する可能性がある。
課題4:セキュリティリスク
システム内製化は、セキュリティリスクも抱えています。社内に開発環境があるため、外部からの攻撃や内部不正による情報漏洩のリスクが高まります。
- サイバー攻撃: 標的型攻撃やランサムウェアなどのサイバー攻撃のリスク。
- 内部不正: 従業員による情報漏洩や不正アクセス。
- セキュリティ対策の不足: セキュリティ対策の知識や経験を持つ人材が不足している。
課題解決に向けた取り組み
内製化によって開発したシステムは、特定の担当者しか理解できない「ブラックボックス化」するリスクがあります。担当者が退職したり、異動したりした場合、システムのメンテナンスや改修が困難になる可能性があります。
- 属人化: 特定の担当者に業務が集中し、ノウハウが共有されない。
- ドキュメント不足: システムの設計書やマニュアルなどのドキュメントが整備されない。
- 引継ぎの難しさ: 担当者が変更になった場合、システムの引継ぎがスムーズに行われない。
人材確保・育成
企業にとってベストな人材の確保と育成は、これまで挙げてきた課題よりもさらに困難の度合が増し、難易度の高い課題問題となっています。
近年の日本では、個人の仕事に対する考え方や給与や休日、働く環境、人間関係に対する要望が大きく変わり、ITエンジニアとしても高い技術力や知識、仕事の成果を求めなくなっている傾向などもあり、殊更、専門知識を持つプロフェッショナルなIT人材の確保と育成が難しくなっています。
以下に課題の基本的な解決例を挙げますが、以下に加えて多くの工夫と考え方の変化が必要になってきています。
- 積極的な採用活動: 新卒採用や中途採用など、積極的にIT人材を採用する。
- 社内研修: 社内研修プログラムを充実させ、ITスキルを向上させる。
- 外部研修: 外部の研修機関を活用し、専門的なスキルを習得させる。
- 資格取得支援: IT関連の資格取得を支援する。
コスト削減
解決の基本的な例を以下に挙げていますが、一旦膨らんでしまったコストを削減する為には、知識と経験を持つエンジニアが旗を振り、プロジェクトをリードしていくことで解決できる課題です。
- 開発効率の向上: 開発プロセスを改善し、開発効率を向上させる。
- ツール導入: 開発ツールを導入し、作業を効率化する。
- クラウド活用: クラウドサービスを活用し、設備投資を抑制する。
プロジェクト管理の強化
こちらも課題6と同様に、知識と経験を持つエンジニアが旗を振り、プロジェクトをリードしていくことで解決できる課題です。
- プロジェクトマネージャー育成: プロジェクト管理の研修を実施し、PM人材を育成する。
- プロジェクト管理ツール導入: プロジェクト管理ツールを導入し、進捗管理や情報共有を効率化する。
- アジャイル開発: アジャイル開発手法を導入し、柔軟な開発体制を構築する。
セキュリティ対策
セキュリティ対策においては、幅広いIT技術の理解が必要になってくるため、正直、内製化することはお勧めできません。セキュリティを専門としているベンダーに依頼し、適切なアドバイスとテストの繰り替えしがベストな解決方法となります。
一方で、内部でできることもありますので、その一部を以下にリストしておきます。
- セキュリティポリシー策定: セキュリティポリシーを策定し、従業員に周知徹底する。
- セキュリティ教育: セキュリティに関する教育を実施し、従業員の意識を高める。
- セキュリティ対策ツール導入: セキュリティ対策ツールを導入し、セキュリティレベルを向上させる。
システムの可視化
これは、多くの企業で忘れがちになっている課題ではありますが、非常に重要な課題・問題です。以下にあげた課題を適切かつ丁寧に行うことにより、システムの安定稼働だけでなく、品質の向上、(引継ぎ等も含めた)安定した運用管理が可能になります。
- ドキュメント作成: システムの設計書やマニュアルなどのドキュメントを整備する。
- ソースコード管理: ソースコード管理システムを導入し、バージョン管理を行う。
- ナレッジ共有: 社内Wikiなどを活用し、システムに関する情報を共有する。
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まとめ
システム内製化は、DX推進において重要な役割を果たしますが、多くの課題も抱えています。企業は、人材不足、コスト増加、プロジェクト管理、セキュリティリスク、ブラックボックス化などの課題を解決するための取り組みを進める必要があります。
本レポートで挙げた課題解決策を参考に、各企業は自社の課題や状況に合わせて適切な対策を講じることで、システム内製化を成功に導くことができると考えられます。
APPSWINGBYでは、本記事でご紹介した多くの課題や問題を解決する為の高度なIT専門知識と経験、そして大型プロジェクトでの実績を有しています。自社内で解決することが難しいシステム内製化による課題がありましたら、お気軽にご相談ください。
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この記事を書いた人
株式会社APPSWINGBY マーケティング
APPSWINGBY(アップスイングバイ)は、アプリケーション開発事業を通して、お客様のビジネスの加速に貢献することを目指すITソリューションを提供する会社です。
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監修
株式会社APPSWINGBY
CTO 川嶋秀一
動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。