FinOpsとは?クラウド コストを削減し最適化する

- 1. 1.FinOpsとは?
- 1.1. クラウド利用の急増とコスト管理の複雑化
- 1.2. 従来のコスト管理手法の限界とビジネスへの影響
- 1.3. FinOps導入がもたらすメリット:コスト削減、効率化、ビジネス価値向上
- 2. 2.FinOpsの定義:クラウドコスト最適化のための実践的アプローチ
- 2.1. FinOpsの6つの基本原則:コラボレーション、アクセシビリティ、集中管理など
- 2.1.1.1. 1.チームの協働(Teams need to collaborate)
- 2.1.1.2. 2.すべてのメンバーによるクラウド利用への責任(Everyone takes ownership)
- 2.1.1.3. 3.中央集約チームの存在(A centralized team drives FinOps)
- 2.1.1.4. 4.アクセシビリティとタイムリーなレポーティング(Reports should be accessible and timely)
- 2.1.1.5. 5.行動につながるインサイト(FinOps reports should lead to action)
- 2.1.1.6. 6.可変コストモデルの活用(Take advantage of the variable cost model of the cloud)
- 2.2. DevOps、アジャイルとの関係性:迅速な開発とコスト最適化の両立
- 2.2.1.1. DevOps+FinOpsのメリット
- 2.2.1.2. アジャイル開発+FinOpsのメリット
- 3. まとめとお問い合わせのご案内
1.FinOpsとは?
FinOpsとは、企業のクラウドコスト管理を効率化し、ビジネス価値の最大化を目指すための運用手法です。
財務部門(Finance)と開発・運用部門(DevOps)を密接に連携させることで、リアルタイムに変化するクラウド利用状況を迅速に把握し、最適化するためのプロセスを整備します。
FinOpsという言葉は、近年のクラウド普及やマルチクラウド化に伴うコスト管理の複雑化を背景に生まれ、世界的に導入が進んでいます。
FinOpsのアプローチでは、単なるコスト削減だけでなく、各部門やプロジェクトが「どのようにクラウドを使い」「どのようなビジネス価値を創出しているか」を可視化し、最適な投資と回収を目指す点が特徴といえます。クラウドの特性である従量課金やスケーラビリティを上手に活用する一方で、無駄や重複を排除し、必要最小限のコストで最大の成果を得るための実践的なフレームワークとして注目されています。
クラウド利用の急増とコスト管理の複雑化
近年、多くの企業がデジタルトランスフォーメーションを加速させるためにクラウドを活用しています。
海外の調査報告になりますが、Flexeraによる「2023 State of the Cloud Report(外部リンク)」によると、調査対象企業の93%が複数のクラウドを活用する、いわゆるマルチクラウド戦略を採用していると報告されています。レポートの詳細についてのご紹介は割愛させて頂きますが、クラウドの利用形態が高度化すると、下記のような課題が顕在化しやすくなるということを示しています。
- リソースのスケールアップ・ダウンが頻繁に行われる
- 部署やプロジェクトごとに複数のクラウドサービスを利用
- 請求書やコストの内訳が複雑化し、従来の会計基準との整合を取りにくい
こうした複雑性が増した環境では、単にクラウド利用を監視するだけでなく、どの部署・プロジェクト・サービスがどの程度コストを使っているかを可視化し、なおかつ不要なコストや非効率な構成を早期に見つけ出して改善する仕組みが求められています。
従来のコスト管理手法の限界とビジネスへの影響
従来のコスト管理は、主に固定資産やオンプレミスサーバーのリソース管理を前提としていました。あらかじめ一定の予算を確保してハードウェアを購入し、定期的な保守費用やライセンス料金を管理するという方法です。
しかし、クラウド環境では従量課金制が基本であり、利用状況に応じてコストがリアルタイムに変動します。このリアルタイム性に追随できないまま放置すると、ビジネス上の以下のような影響が発生します。
- 予想外のコスト増大による予算オーバー
- コスト削減要請に伴う機能開発やサービス品質の低下
- コストの責任所在が曖昧になり、ビジネス意思決定が遅れる
特に中~大企業の開発部門では、部門横断的なコスト管理が求められます。プロジェクトごとに開発チームが別のクラウドリソースを利用している場合、全体を俯瞰できる「仕組み」や「役割」が不十分だとコストが膨れ上がってしまうことも少なくありません。
FinOps導入がもたらすメリット:コスト削減、効率化、ビジネス価値向上
FinOpsは、Finance(財務)とDevOps(開発・運用)の文化やプロセスを組み合わせた造語で、コストを最適化しながらビジネス価値を最大化する取り組みの事を意味しています。
FinOpsを導入することで、下記のようなメリットが期待できます。
- コスト削減
- クラウド利用状況を可視化することで、無駄なリソースや使われていないリソースを早期に発見し削減できます。
- スポットインスタンスやリザーブドインスタンスなど、クラウドベンダーの提供する割引プランを活用する体制が整います。
- 運用効率化
- 開発部門と財務部門の連携を促進し、コストに責任をもつ担当者を明確化することで、コスト面と機能要件をバランスよく検討できるようになります。
- リアルタイムモニタリングやアラート設定を活用し、運用業務を自動化する機会が増えます。
- ビジネス価値向上
- プロジェクトごとのROI(投資対効果)を可視化しやすくなり、経営層の意思決定を加速できます。
- コスト最適化によって余剰となった予算やリソースを、新規の開発やサービス強化に回すことでビジネス価値を高められます。
例えば、世界的なストリーミングサービス企業であるSpotifyでは、FinOpsの考え方を取り入れクラウドコストの可視化とチーム単位での責任明確化を進めた結果、大幅なコスト削減と開発のスピードアップを実現しています。
FinOpsは、クラウド時代のコスト管理を抜本的に変革し、ビジネスの競争力を高めるための重要なアプローチとして今注目されています。
2.FinOpsの定義:クラウドコスト最適化のための実践的アプローチ

まず最初に、FinOpsを知る上で、FinOps Foundationという団体が提唱している「FinOpsの6つの基本原則」についてご紹介しておきます。
FinOpsの6つの基本原則:コラボレーション、アクセシビリティ、集中管理など
FinOps Foundationが提唱する6つの基本原則は、FinOpsの導入や運用を成功させるための重要なガイドラインです。以下では、6つの基本原則についてのそれぞれのポイントをわかりやすく概説します。
1.チームの協働(Teams need to collaborate)
FinOpsを円滑に進めるためには、財務部門と開発・運用部門の間で緊密なコミュニケーションが欠かせません。各部門がコストに対する責任感を共有し、目標と課題を共有することで、適切な意思決定と迅速なアクションが可能になります。
2.すべてのメンバーによるクラウド利用への責任(Everyone takes ownership)
FinOpsでは、クラウドリソースの利用は特定の部門だけの責任ではなく、組織全体でコスト意識を持つことが求められます。開発チームがインフラに対して責任をもち、財務チームが技術リソースに理解を深めることで、部署横断的な最適化を推進します。
3.中央集約チームの存在(A centralized team drives FinOps)
クラウドコストを最適化するには、全体を統括・管理する専任のFinOpsチームが必要です。各プロジェクトや部門からの要望を集約し、コスト可視化やレポーティング、ツール選定・運用標準化などを統括することで、組織全体の無駄を最小化します。
4.アクセシビリティとタイムリーなレポーティング(Reports should be accessible and timely)
クラウド利用状況やコストの情報をタイムリーに共有することが重要です。リアルタイムまたは定期的に更新されるレポートやダッシュボードを、必要とするメンバーがいつでも参照できるようにすることで、問題発生時に素早い対策が可能となります。
5.行動につながるインサイト(FinOps reports should lead to action)
レポートは作成するだけでは意味がなく、具体的な改善アクションにつなげる必要があります。例えば、利用度合いの低いインスタンスの削除や、割引オプションの適用などを迅速に実施し、継続的なコスト最適化を図ります。
6.可変コストモデルの活用(Take advantage of the variable cost model of the cloud)
クラウドは従量課金制という特性上、利用量に応じてコストを増減させやすいメリットがあります。FinOpsではこのメリットを最大限に活用し、ビジネスの需要に応じてスケールアップ・ダウンを実行することで、必要十分なリソースを確保しながらコストをコントロールします。
これらの原則を実践することで、組織は無駄なクラウド支出を削減し、予算内で最大限のパフォーマンスを発揮する体制を構築できます。
DevOps、アジャイルとの関係性:迅速な開発とコスト最適化の両立
FinOpsは、DevOpsやアジャイル開発とも密接に関わっています。
DevOpsが「開発(Development)と運用(Operations)の連携強化」を目的とする文化・プラクティスであるのに対し、FinOpsはそこに「財務(Finance)」の視点を加えたアプローチといえます。
アジャイル開発は「スモールスタートと短いサイクルでの継続的な改善」を重視していますが、FinOpsはその開発サイクルにおいて、コスト面のフィードバックサイクルを組み込みます。
それぞれの組み合わせによるメリットについて見ていきましょう。
DevOps+FinOpsのメリット
- 迅速な機能追加やリリースを実現するDevOpsのフレームワークに、リアルタイムのコスト管理と最適化を組み合わせることで、ビジネス要件とコスト要件のバランスを取りやすくなります。
- 開発者がインフラ管理の責任を負うDevOpsの文化は、FinOpsの「コストへの責任共有」という考え方と相性が良く、組織への浸透が比較的スムーズになります。
アジャイル開発+FinOpsのメリット
- アジャイル開発の短い開発サイクルでクラウドリソースの利用状況をこまめに見直すことで、コスト予測や管理がしやすくなります。
- MVP(Minimum Viable Product)の実装段階からクラウドコストを考慮することで、開発初期から無駄を省いた設計が可能になります。
このように、DevOpsやアジャイル開発との組み合わせにより、FinOpsは単なるコスト抑制だけでなく、迅速な開発プロセスを損なうことなく持続的にコスト最適化を行うための基盤となるのです。
FinOpsを導入・定着させるためには、組織全体の文化変革とツール活用、そして継続的な改善サイクルが不可欠です。結果として、ビジネス全体のイノベーションと競争力を高める一助となります。
次回は、”FinOps導入のステップや具体的な実践方法”について詳しく解説していきます。クラウドコストを抑えながらも迅速なサービス提供を目指す企業の方々にとって、FinOpsは確実に検討すべき手法のひとつです。ぜひ自社の開発現場や経営戦略にどのように組み込めるか、イメージを膨らませていただければと思います。
まとめとお問い合わせのご案内
クラウドの利用は今後ますます拡大すると予測される一方で、そのコスト管理の複雑さも増していきます。従来の固定的なコスト管理手法では、急激に変化するクラウド環境に対応しきれません。
そこで、FinOpsの導入が注目されています。FinOpsを通じてクラウドコストを可視化し、無駄や非効率を迅速に削減できれば、コスト管理の高度化だけでなく、新たな事業機会の創出や競争力強化にもつながります。
APPSWINGBYでは、長年にわたるシステム開発・リファクタリングなどのソフトウェアエンジニアリング事業を通じて培ったクラウド活用のノウハウを活かし、お客様のクラウドコスト管理を支援いたします。FinOpsの考え方を組み込みながら、開発部門だけでなく経営層・財務部門まで巻き込んだコスト最適化の仕組みを構築することで、ビジネス全体の価値向上を目指します。
FinOpsの導入やクラウドコスト最適化に関して疑問点がありましたら、ぜひお問い合わせフォームよりご相談ください。
皆さまのクラウド活用が、より効果的で持続的な成長につながるよう、専門チームが全力でサポートいたします。

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この記事を書いた人

株式会社APPSWINGBY マーケティング
APPSWINGBY(アップスイングバイ)は、アプリケーション開発事業を通して、お客様のビジネスの加速に貢献することを目指すITソリューションを提供する会社です。
ご支援業種
情報・通信、医療、製造、金融(銀行・証券・保険・決済)、メディア、流通・EC・運輸 など多数

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監修

株式会社APPSWINGBY CTO 川嶋秀一
動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。

株式会社APPSWINGBY CTO 川嶋秀一
動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。