L2Fとは
L2Fは、インターネットなどの公衆ネットワーク上で、ダイヤルアップ接続を仮想的に拡張し、遠隔地から企業内ネットワークなどへ安全に接続するためのトンネリングプロトコルのことです。
正式名称をLayer 2 Forwardingと呼び、1990年代にCisco Systems社によって開発されました。OSI参照モデルの第2層(データリンク層)において、PPP(Point-to-Point Protocol)やSLIP通信をカプセル化して伝送する技術であり、後にMicrosoft社のPPTPと統合される形で、現代でも広く利用されているL2TP(Layer 2 Tunneling Protocol)の基盤となりました。
L2Fの仕組みと通信の流れ
L2Fは、主にISP(インターネットサービスプロバイダ)のアクセスサーバーと、企業のゲートウェイ機器との間でトンネルを構築するために設計されました。
1. 通信のプロセス
ユーザーがISPのNAS(Network Access Server)にダイヤルアップ接続を行うと、NASはL2Fプロトコルを使用して、企業のホームゲートウェイへとPPPセッションを転送します。これにより、ユーザーの認証やIPアドレスの割り当ては、企業のネットワーク側で行われることになります。
2. カプセル化の構造
L2Fは、第2層のフレームを直接UDPパケット(ポート番号1701)にカプセル化して伝送します。L2Fヘッダーには、トンネルを識別するための「CLID(Client ID)」や、各セッションを区別するための「MID(Multiplex ID)」が含まれており、一つのトンネル内で複数のユーザーセッションを同時に扱うことが可能です。
L2Fの特徴とメリット
L2Fが開発された当時、以下の点が画期的な機能として評価されました。
- 透過的な接続:ユーザー側で特殊なソフトウェアを導入することなく、通常のダイヤルアップ接続と同様の操作で社内ネットワークにアクセスできます。
- 認証の柔軟性:RADIUSサーバーなどと連携し、ISP側と企業側の二段階で認証を行うことが可能です。
- プロトコル依存性の低さ:IPだけでなく、当時利用されていたAppleTalkやIPXといった複数のネットワーク層プロトコルを透過的に運ぶことができました。
PPTPとの違いとL2TPへの統合
L2Fと同時期に普及したPPTP(Point-to-Point Tunneling Protocol)と比較すると、技術的なアプローチに以下の違いがありました。
| 比較項目 | L2F (Cisco方式) | PPTP (Microsoft方式) |
| 動作階層 | データリンク層(第2層) | データリンク層(第2層) |
| トランスポート | UDPを直接利用 | TCP(制御)とGRE(データ)を利用 |
| 依存性 | 特定のハードウェアに依存しやすい | WindowsなどのOS側に依存 |
これらの異なる仕様を統一し、各社の互換性を確保するために標準化されたのがL2TPです。L2FはL2TPの仕様策定において、特にマルチプロトコル対応やUDPベースの転送といった概念において多大な影響を与えました。
運用上の留意点と安全性
L2F自体には、データの暗号化機能が標準で備わっていません。そのため、機密性を確保するためには上位層で暗号化を行うか、別途セキュリティ対策を講じる必要があります。
また、パケットのカプセル化に伴い、ネットワークのMTU(最大伝送単位)を考慮する必要があります。有効なデータサイズを
![]()
、カプセル化によるヘッダーの合計サイズを
![]()
とすると、転送効率
は以下のように表されます。
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L2Fは現在、単体で新規導入されることはほとんどありませんが、VPN技術の歴史的発展を理解する上で極めて重要なプロトコルであり、その設計思想は現代のネットワークインフラにも継承されています。
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