L2TPとは
L2TPは、コンピュータネットワークにおいて、ある地点から別の地点まで仮想的なトンネルを構築し、データを透過的に転送するためのトンネリングプロトコルのことです。
正式名称をLayer 2 Tunneling Protocolと呼び、OSI参照モデルの第2層(データリンク層)のフレームをカプセル化して転送する特性を持ちます。主にVPN(仮想専用線)の構築に利用されますが、L2TP自体には通信の内容を暗号化する機能が備わっていないため、実務上は暗号化プロトコルであるIPsecと組み合わせて「L2TP/IPsec」として運用されるのが一般的です。
L2TPの成立背景と基本構造
L2TPは、かつて利用されていたMicrosoft社のPPTP(Point-to-Point Tunneling Protocol)と、Cisco社のL2F(Layer 2 Forwarding)という2つのプロトコルの仕様を統合し、IETF(インターネット技術タスクフォース)によって標準化されたものです。
1. PPPフレームの継承
L2TPは、ダイヤルアップ接続などで広く使われていたPPP(Point-to-Point Protocol)の機能を、インターネットなどのIPネットワーク上へと拡張します。これにより、遠隔地のクライアントが社内LANなどの特定のネットワークに直接接続しているかのような環境を擬似的に作り出します。
2. カプセル化の階層構造
L2TP通信では、元のデータ(IPパケットなど)がまずPPPでカプセル化され、次にL2TPヘッダーが付与されます。さらにそれがUDPパケット(通常はポート番号1701を使用)としてパッケージ化され、最終的にインターネット上のIPパケットとして送信されます。
IPsecとの併用(L2TP/IPsec)
前述の通り、L2TPはデータの「通り道(トンネル)」を作る機能に特化しており、機密性を保護するための暗号化機能を持っていません。そのため、現代のインターネット環境では、ネットワーク層(第3層)のセキュリティプロトコルであるIPsecと併用されます。
- L2TPの役割: ユーザー認証や、仮想的な通信経路の確立を担当します。
- IPsecの役割: トンネル内を流れるデータの暗号化、改ざん検知、および通信相手の認証を担当します。
L2TPの動作メリットとデメリット
1. メリット
- 高い互換性: Windows、macOS、iOS、Androidなど、主要なオペレーティングシステムにおいて標準でサポートされており、専用のクライアントソフトをインストールすることなく利用可能です。
- 柔軟な認証: PPPの認証仕組みを利用できるため、PAPやCHAPといった多様な認証方式を選択でき、既存のユーザー管理システムとの連携が容易です。
2. デメリット
- オーバーヘッドの増大: 多重にカプセル化を行うため、パケットのヘッダー部分が大きくなります。これにより、1つのパケットで送れる純粋なデータ量(ペイロード)が減少し、通信効率が低下する場合があります。
- ファイアウォールの通過性: 固定のUDPポートを使用するため、一部のネットワーク環境や厳しい制限のあるファイアウォール下では、通信が遮断されることがあります。
通信効率の理論的評価
L2TPの導入による通信効率の変化を評価する際、MTU(最大伝送単位)とパケットオーバーヘッドの関係を考慮する必要があります。有効なスループット率
は、物理的なMTUサイズ
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と、L2TPおよびIPsecによる付加ヘッダーの合計サイズ
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を用いて、以下のように定義されます。
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実務においては、このオーバーヘッドによるパケットの断片化(フラグメンテーション)を防ぐため、MTU値やMSS(最大セグメントサイズ)の適切な調整が求められます。
現代における位置付け
L2TP/IPsecは、長らくリモートアクセスVPNの標準的な手法として利用されてきましたが、近年ではTLS/SSLを利用した「SSL-VPN」や、より高速で軽量なプロトコルである「WireGuard」などに取って代わられる場面も増えています。しかし、その信頼性と普及度の高さから、依然として多くの企業ネットワークにおいて現役のソリューションとして維持されています。
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