LRU近似アルゴリズムとは
LRU近似アルゴリズムは、仮想記憶システムやキャッシュメモリにおいて、純粋なLRU(Least Recently Used、最も長い間使われていない)アルゴリズムの複雑な実装を避けるために、簡易的なハードウェア補助やビット操作を用いて、アクセス頻度の低いデータを推定し置き換え対象とする手法のことです。
LRU近似アルゴリズムの概要と必要性
LRU(Least Recently Used)アルゴリズムは、メモリやキャッシュの管理において、次に必要とされる可能性が最も低いページやデータを特定し、置き換えの対象とするための理想的なページ置き換えアルゴリズムです。その基本原理は、「過去に最も長い間使われていないデータは、将来も使われる可能性が低い」という局所性の原理に基づいています。
純粋なLRUアルゴリズムを厳密に実装するためには、全てのページまたはブロックに対して、最後にアクセスされた正確な時刻を記録するか、あるいはアクセス順序を保持する線形リストやスタックを維持する必要があります。大規模なメモリシステムや高速なキャッシュ環境において、この記録やリスト操作を全てのアクセスに対して行うことは、オーバーヘッドが大きく、システム性能を大幅に低下させる原因となります。
LRU近似アルゴリズムは、このオーバーヘッドを回避するために考案されました。厳密なLRUではないものの、非常にシンプルな仕組みで「最も長い間使われていない」状態を高い精度で推定し、実用的な性能と効率を両立させます。
主な目的は、システム性能への影響を最小限に抑えつつ、LRUポリシーに近い高いページ置換効率を実現することです。
代表的なLRU近似アルゴリズム
LRU近似アルゴリズムにはいくつか種類がありますが、ここでは代表的なものを解説します。
1. 参照ビット方式(Reference Bit Method)
これは最も単純で広く使われる近似アルゴリズムです。
- 仕組み:
- 各ページに参照ビット(Reference Bit)を割り当てます。このビットは通常、ハードウェアによって提供され、ページがメモリにロードされる際に 0 に初期化されます。
- CPUがそのページにアクセスするたびに、ハードウェアがこの参照ビットを自動的に 1 にセットします。
- 置き換え判断:
- OSやシステムが定期的に(例:クロック割り込みごとに)、全てのページを巡回し、参照ビットをチェックします。
- 参照ビットが 0 のページは、「前回のチェック以降に使われていない」と判断され、置き換え候補となります。
- チェック後、参照ビットは再び 0 にリセットされます。
- 特性:
- 厳密なアクセス順序は記録されませんが、最近使われたかどうかという大まかな情報だけを把握できます。
2. FIFOと参照ビットの組み合わせ(Second-Chance / Clock Algorithm)
参照ビット方式を改良し、LRUにより近づけた手法です。
- 仕組み:
- ページを円環状のリスト(キュー)で管理し、ポインタ(時計の針に例えられる)が常に次の置き換え候補を指します(FIFOのように振る舞う)。
- ページにアクセスがあった場合、参照ビットは 1 にセットされます。
- 置き換え判断:
- ポインタが指すページをチェックします。
- 参照ビットが 1 の場合: そのページに**「二度目のチャンス」**を与えます。参照ビットを 0 にリセットし、ポインタを次に進めます。
- 参照ビットが 0 の場合: そのページは置き換え対象として選ばれます(最近使われていないと判断)。
- 特性:
- ポインタが一周する間に参照されなかったページのみが置き換えられるため、比較的最近使われたページが置き換えられるのを効果的に防ぎます。参照ビットのチェックとリセットを定期的に行う必要がなく、常に必要なときだけ実行すれば良い点も効率的です。
3. n ビット方式
参照ビットを複数(例:8ビット)持つように拡張した方式です。
- 仕組み:
- 各ページの n ビットのカウンターを保持します。
- 定期的に(例:クロック割り込みごとに)、全てのカウンターを右にシフトし、最上位ビット(MSB)に現在の参照ビット(1または0)を挿入します。
- 置き換え判断:
- カウンターの値全体が、そのページの最近の利用履歴を表します。
- カウンターの値が最も小さいページが、最も長い間参照されていないページ(LRUに近い)と判断され、置き換え対象となります。
- 特性:
- 履歴の長さは n ビットで制限されますが、単純な参照ビット方式よりもアクセス頻度の時間的な順序を細かく把握できます。
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