Multi-AZとは

Multi-AZは、クラウドコンピューティング、特にAWS(Amazon Web Services)において、システムやデータを複数の独立したアベイラビリティゾーン(Availability Zone, AZ)に分散配置し、高い可用性、耐障害性、およびデータ耐久性を実現するための設計パターンのことです。

Multi-AZの概要と可用性への貢献

Multi-AZ(マルチアベイラビリティゾーン)は、AWSが提供するクラウドインフラストラクチャの地理的な分散アーキテクチャを活用したデプロイメント戦略です。

アベイラビリティゾーン(AZ)とは、一つのリージョン(地域)内に存在する、物理的に分離され、独立した電源、冷却システム、ネットワークを備えたデータセンター群のことです。AZ間は低レイテンシ(低遅延)で高速なネットワークで接続されています。

Multi-AZ構成を採用することにより、システムの一部が配置されているAZ全体が、地震、大規模な停電、洪水などの単一障害点(Single Point of Failure)となるような大規模な障害に見舞われた場合でも、別の健全なAZでシステムが稼働し続けることが保証されます。

主な目的は、単一のデータセンターやAZで発生する障害からシステムを保護し、サービスが継続的に利用できる状態(高可用性)を維持することです。

Multi-AZの技術的仕組みと設計パターン

Multi-AZ構成は、データベースや仮想サーバー(EC2)、ロードバランサーなど、様々なクラウドサービスで異なる仕組みで実装されます。

1. リレーショナルデータベース(RDSなど)での実装

AWSのRDS(Relational Database Service)などのマネージドデータベースサービスでMulti-AZを有効にすると、プライマリデータベースのインスタンスとは別に、異なるAZにスタンバイ(待機系)のインスタンスが自動的にプロビジョニングされます。

  • 同期レプリケーション: プライマリインスタンスへのデータ書き込みは、スタンバイインスタンスへ同期的に複製されます。これにより、障害発生時にもデータ損失(RPO)がゼロまたは最小限に抑えられます。
  • 自動フェイルオーバー: プライマリAZに障害が発生した場合、RDSはDNSレコードを自動で更新し、スタンバイインスタンスへの切り替え(フェイルオーバー)を迅速に行います。ユーザーから見ると、一時的な接続断が発生するだけで、アプリケーションは新しいプライマリインスタンスに再接続して処理を再開できます。

2. EC2インスタンスとロードバランサーでの実装

仮想サーバー(EC2)を使用するアプリケーションの場合、Multi-AZはロードバランサー(ALB/NLB)とオートスケーリンググループを組み合わせて実装されます。

  • 分散配置: オートスケーリンググループが、複数のAZにわたって均等にEC2インスタンスを起動・維持します。
  • トラフィック分散: ロードバランサーが、健全なすべてのAZにあるインスタンスにトラフィックを分散します。
  • AZ障害時: あるAZが利用不能になった場合、ロードバランサーはそのAZ内のインスタンスへのトラフィックを自動的に停止し、残りの健全なAZのインスタンスに処理を継続させます。

Multi-AZの導入効果

効果内容
高可用性(High Availability)サービス停止のリスクを大幅に軽減し、システムの稼働時間を最大化します。
データ耐久性(Data Durability)データベースの同期レプリケーションにより、データが常に複数の物理的に分離された場所に保存されるため、データの損失リスクが極めて低くなります。
災害対策(Disaster Recovery)広い範囲の障害に対応できる、最も基本的なレベルの災害対策が組み込まれています。
Multi-AZの導入効果

Multi-AZは、多くの企業にとって、ミッションクリティカルなシステムをクラウド上で運用するための標準的な設計要件となっています。

関連用語

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