N+M冗長とは
N+M冗長は、システムやサービスの高可用性（High Availability）を確保するために、必要とされる最小限の稼働リソース $N$ に対して、追加の予備リソース $M$ を確保する冗長化構成のことであり、障害が発生した場合でも、 $M$ 個の予備リソースを投入することで、サービスレベルを維持し、ダウンタイムを最小限に抑えるための設計モデルのことです。
N+M冗長の概要と目的
N+M冗長（N+M Redundancy）は、特にサーバー、ストレージ、ネットワーク機器といったITインフラストラクチャにおいて、障害耐性（フォールトトレランス）を向上させるために広く採用される設計パターンです。このモデルは、システムの運用に必要なアクティブリソース（N）と、障害発生時に備えるスタンバイリソース（M）を明確に区別します。
- $N$（アクティブ）: サービスを正常に提供するために、常に稼働している必要のある最小限のコンポーネント数や容量。
- $M$（スタンバイ）: $N$ 個のコンポーネントのうち、同時に $M$ 個が故障しても、残りのリソースで $N$ の要求を満たし続けられるように確保された予備のリソース数。
例えば、「$N=2$、 $M=1$ の冗長構成」の場合、最低限のサービス維持に必要なサーバーは2台ですが、予備として1台のサーバーをスタンバイさせておきます。これにより、1台のサーバーが故障しても、予備機が引き継ぐことでサービスが継続されます。
主な目的は、システム全体の信頼性を高めること、特に複数のコンポーネントが同時に故障する「多重障害」が発生した場合でも、定められた $M$ の範囲内でサービスを継続できる保証を提供することです。
N+M冗長の具体的なパターン
冗長構成の設計は、$M$ の値や $N$ の必要性によって、いくつかのパターンに分類されます。
1. N+1冗長
$M=1$ のパターンであり、最も一般的で費用対効果が高い冗長化レベルです。
- 構成: 最小限必要な $N$ 台の機器に対し、予備機を1台（+1）用意します。
- 利点: 単一障害点（SPOF）を解消し、一台の機器故障であれば確実にサービスを継続できます。コストと信頼性のバランスが優れています。
- 課題: 2台以上の同時故障には対応できません。
2. N+N冗長（ホットスタンバイ）
$M$ が $N$ と同数であるパターン、すなわち100%の冗長性を持たせる構成です。これは、アクティブ-パッシブ構成や、アクティブ-アクティブ構成の特殊な形として捉えられます。
- 構成: $N$ の現用系と同じリソース $N$ を待機系として準備します。
- 利点: 非常に高い信頼性を提供し、$N$ 台すべてが同時に故障するという極めて稀なケースを除き、サービスを維持できます。
- 課題: 必要なリソース量が倍になるため、最もコストが高くなります。
3. N+Mプール冗長（例：クラウド環境）
物理的な予備機を固定するのではなく、共通の予備リソースプールから必要な $M$ を充当する考え方です。
- 構成: $N$ のアクティブインスタンスとは別に、$M$ の予備容量をプールとして用意しておき、どの $N$ のコンポーネントが故障しても、この $M$ から代替機が割り当てられます。
- 利点: 予備リソースを特定の $N$ に紐づけないため、リソースの利用効率が向上します。
N+M冗長の評価
システムの可用性 $A$ は、平均故障間隔 $MTBF$（Mean Time Between Failures）と平均修復時間 $MTTR$（Mean Time To Repair）を用いて評価されます。冗長化は主に $MTBF$ を向上させます。
冗長化されたシステム全体が故障する確率（システムダウン）は、 $M$ 台以上の多重障害が起きる確率に依存します。
$N+M$ 冗長構成の選択は、以下の要素を考慮して決定されます。
- RTO（Recovery Time Objective）: 障害発生から復旧までの目標時間。スタンバイ機への切り替えが早いほど、この値は小さくなります。
- コスト: $M$ を増やすほど信頼性は高まりますが、設備投資（CAPEX）と運用費（OPEX）が増加します。
- サービスのクリティカル度: サービスが停止した場合のビジネスへの影響度が高いほど、$M$ の値を大きく設定する必要があります。
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