NP完全問題とは

NP完全問題は、計算量理論において最も難解なクラスの一つに属する決定問題であり、非決定性チューリングマシンによって多項式時間で解ける(NPに属する)問題の中で、全てのNP問題に多項式時間で帰着可能であるという、最も困難な問題群のことです。

NP完全問題の概要と計算量理論

NP完全問題(NP-Complete Problem, NPC)は、コンピュータサイエンスの理論的な分野である計算量理論において中心的な概念です。この問題群は、現在のところ効率的に解くアルゴリズムが存在しないと考えられている、実用上極めて重要な問題を含んでいます。

1. 決定問題

NP完全問題は、すべて決定問題(Decision Problem)、すなわち答えが「Yes」または「No」のどちらかになる問題として定義されます。

2. クラスPとクラスNP

問題を解くために必要な計算資源(時間など)に基づいて、決定問題は大きく二つのクラスに分けられます。

  • クラスP(Polynomial Time):
    • 問題を解くためのアルゴリズムが、入力サイズ n に対して多項式時間 O(nk) で実行できる問題のクラスです。これは、コンピュータにとって「効率的に解ける」問題と見なされます。
  • クラスNP(Non-deterministic Polynomial Time):
    • 問題を解くアルゴリズムは知られていませんが、解の候補(証拠)が与えられたとき、それが正しいかどうかを多項式時間で検証できる問題のクラスです。Pに属する問題はすべてNPにも属します。

3. NP完全問題の定義

NP完全問題は、以下の2つの条件を同時に満たす問題 L のことを指します。

  1. NPに属する: 問題 L はNPクラスに属する。
  2. NP困難である(NP-Hard): NPに属する任意の全ての問題 L′ が、問題 L に多項式時間で帰着可能(Reduction)である。

ここでいう「帰着可能」とは、問題 L′ を解くためのアルゴリズムが、問題 L を解くためのアルゴリズムをサブルーチンとして使用し、L′ の解を多項式時間で得られることを意味します。これにより、NP完全問題がNPの中で最も困難な問題であることが数学的に保証されます。

P vs NP問題と実用的な意味

P vs NP問題

計算量理論における最大の未解決問題の一つが、「P = NPか?」という問いです。

  • P = NP の場合:
    • NP完全問題を含む、すべてのNP問題には、多項式時間で解ける効率的なアルゴリズムが存在するということになります。
  • P = NP の場合:
    • NP完全問題は多項式時間では解けず、解くためには指数関数的な時間が必要であるということになります。

現在、多くの専門家は P=NP であると信じています。この問題の解決は、クレイ数学研究所から100万ドルの懸賞金がかけられています。

実用的な意味

現実世界においてNP完全問題に直面した場合、P=NP であるという仮定に基づき、以下の手法が採用されます。

  1. 近似アルゴリズム: 厳密な最適解ではなく、最適解に近い「十分良い」解を多項式時間で求める手法です。
  2. ヒューリスティクス: 効率は保証されませんが、経験則や発見的な方法を用いて、実用的な時間内に解を見つける手法です(例:遺伝的アルゴリズム、焼きなまし法)。
  3. 特殊なケースの利用: 問題の制約や入力データが持つ特定の構造を利用し、その特殊な条件下でのみ効率的に解けるアルゴリズムを使用します。

代表的なNP完全問題

NP完全であることが証明されている問題は数多く存在し、その一部は実世界の最適化問題と深く関連しています。

関連用語

近似アルゴリズム | 今更聞けないIT用語集
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