OpenAI Fiveとは

OpenAI Fiveは、強化学習を用いて開発された、プロフェッショナルなeスポーツ選手レベルのスキルで、複雑なリアルタイムストラテジーゲーム『Dota 2』をプレイするように訓練されたAIボットのチームのことです。

OpenAI Fiveの概要と開発の意義

OpenAI Fiveは、非営利AI研究機関OpenAIによって2018年に開発され、特に複雑なマルチエージェント環境における協調(Cooperation)と競争(Competition)の課題解決を目指したディープ強化学習(DRL)プロジェクトの成果です。

このAIは、5対5で対戦するリアルタイムストラテジー(RTS)ゲーム『Dota 2』において、世界トップクラスの人間チームを打ち負かしたことで世界的な注目を集めました。

Dota 2は、膨大な数の状態(ゲーム内の状況)と、各エージェント(ボット)がリアルタイムで取りうる広大な行動空間(アクションの選択肢)を持つ、極めて複雑なゲームです。

また、5体のエージェントが連携して行動する必要があり、これはマルチエージェント強化学習における協調の難しさを象徴しています。OpenAI Fiveの成功は、大規模な分散訓練と強化学習アルゴリズムによって、このような複雑な問題を解決できることを証明しました。

主な目的は、複雑なマルチエージェント環境における汎用的な学習アルゴリズムの能力を実証することです。

OpenAI Fiveの学習メカニズム

OpenAI Fiveがプロレベルのパフォーマンスを達成するために、大規模なコンピューティングリソースと効率的な強化学習アルゴリズムが活用されました。

1. 大規模分散訓練(Massive Distributed Training)

  • 概要: OpenAI Fiveは、数万コアのCPUと数百枚のGPUを使用した極めて大規模な分散環境で訓練されました。
  • 動作: 自己対戦(Self-Play)と呼ばれる手法が中心です。これは、AIチーム同士が互いに対戦を繰り返すことで、人間からの教師データを使わずに、スキルを向上させる方法です。訓練のピーク時には、現実時間の約180年分に相当するゲームプレイが、毎日並行して行われました。

2. PPOアルゴリズムの活用

  • 概要: 強化学習アルゴリズムには、近傍方策最適化(Proximal Policy Optimization, PPO)が用いられました。
  • 動作: PPOは、方策勾配法(Policy Gradient)の一種であり、学習の安定性と効率性に優れています。大規模な環境において、報酬(ゲーム内の目標達成度)を最大化するような最適な行動方策を、安定して探索し学習するために利用されました。

3. LSTMを用いた履歴の利用

  • 概要: Dota 2は、過去の行動や観測が現在の意思決定に影響を与える部分観測可能な環境です。
  • 動作: 各ボットのニューラルネットワークには、LSTM(Long Short-Term Memory)と呼ばれるリカレントニューラルネットワーク(RNN)の層が組み込まれています。これにより、ボットは現在の観測だけでなく、過去のゲームの状況や行動の履歴を記憶・考慮に入れながら、最適な行動を選択することができます。

OpenAI Fiveの成果と影響

OpenAI Fiveの最も顕著な成果は、2019年のThe International(Dota 2の世界大会)でのエキシビションマッチにおいて、世界のトッププロチームを打ち負かしたことです。これは、強化学習が人間が創造した最も複雑な課題の一つを克服できることを示しました。

  • 科学的意義: マルチエージェント強化学習の分野において、人間レベルの協調行動やチームワークが、大規模な自己対戦を通じて自動的に創発され得ることを実証しました。
  • 技術的応用: OpenAI Fiveの開発で培われた、大規模な分散型強化学習システムを構築する技術は、ロボティクス、自動運転、複雑なサプライチェーンの最適化など、現実世界のマルチエージェント問題への応用が期待されています。

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