PRNGとは

PRNGは、コンピュータのアルゴリズムに基づいて、ランダムな数列のように見える値を生成する仕組みであり、真の乱数ではないが、決定論的な手法により再現性のある乱数(擬似乱数)を提供する装置のことです。

PRNGの概要と真の乱数との違い

PRNG(Pseudo-Random Number Generator、擬似乱数発生器)は、コンピュータサイエンスにおいて、シミュレーション、ゲーム、暗号技術など、ランダム性が必要な多くの場面で利用される基本的なツールです。

PRNGは、シード(Seed)と呼ばれる初期値と、一定のアルゴリズム(生成式)に基づいて次の値を計算し、それを乱数として出力します。このプロセスは完全に決定論的であり、同じシードを与えれば、何度実行しても常に全く同じ数列が生成されます。

したがって、PRNGによって生成される数列は、統計的な性質は乱数に近いものの、予測可能であるという点で真の乱数(True Random Number, TRNG)とは本質的に異なります。

真の乱数は、物理的なノイズ(例:熱雑音、放射性崩壊)などの予測不可能な自然現象に基づいて生成され、再現性がありません。一方、PRNGは、計算コストが低く、高速かつ大量に乱数を生成できるという利点から、多くのアプリケーションで採用されています。

主な目的は、効率性と再現性を両立させながら、統計的に偏りがなく、十分な周期を持つ乱数列を生成することです。

PRNGの主要な評価基準

PRNGの品質は、主に以下の3つの要素によって評価されます。

1. 周期の長さ(Period Length)

  • 概要: PRNGが同じ数列を繰り返すまでに生成できる乱数の総数です。
  • 重要性: 周期が短いと、乱数列がすぐに繰り返されてしまい、大規模なシミュレーションなどで問題が生じる可能性があります。高品質なPRNGは、非常に長く、実質的に繰り返されない周期を持つ必要があります。

2. 統計的な無作為性(Statistical Randomness)

  • 概要: 生成された数列が、統計的なテスト(例:均等性、独立性、無相関性)に合格し、真の乱数と見分けがつかないこと。
  • 重要性:
    • 乱数の偏りや相関があると、シミュレーションやモンテカルロ法などの結果に誤りが生じる原因となります。

3. 予測不可能性(Unpredictability)

  • 概要: 数列の一部を知っている観測者が、次の乱数を予測することが極めて困難であること。
  • 重要性: 特に暗号技術(例:鍵生成、認証トークン生成)で使用されるPRNGは、この予測不可能性が最も重視され、CSPRNG(Cryptographically Secure PRNG)と呼ばれます。CSPRNGは、通常のPRNGよりも複雑なアルゴリズムやエントロピー源(システムのランダムなノイズ)を利用します。

代表的なPRNGアルゴリズム

1. 線形合同法(Linear Congruential Generator, LCG)

  • 概要: 最も古く、最も単純なPRNGアルゴリズムの一つで、以下の線形合同式に基づいて次の乱数を生成します。

X_{n+1} = (aX_n + c) \bmod m

ここで、Xn​ は現在の乱数(シード)、Xn+1​ は次の乱数、a は乗数、c は加数、m は法(モジュラス)です。

  • 課題: LCGは計算が高速ですが、周期が比較的短く、統計的な欠陥が発見されやすいため、現代の高性能なアプリケーションには不向きです。

2. メルセンヌ・ツイスター(Mersenne Twister)

  • 概要: 1997年に開発されたPRNGで、非常に長い周期(219937−1)と優れた統計的無作為性を持つことで知られています。
  • 利用: MATLAB、R、Python(NumPyなど)といった多くの科学技術計算ライブラリで標準的なPRNGとして採用されています。ただし、決定論的であるため、暗号用途には推奨されません。

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