R-CNNとは

R-CNN(Regions with Convolutional Neural Network)とは、画像内の物体の位置を特定し、その種類を識別する物体検出タスクにおいて、深層学習を初期に効果的に活用した手法の一つです。

画像中から物体が存在する可能性の高い領域(Region Proposals)を抽出し、それらの領域に対して畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて特徴量を抽出し、最後にサポートベクターマシン(SVM)などの分類器を用いて物体の種類を判定します

R-CNN の基本概念

R-CNNは、物体検出を以下の3つの主要なステップに分けて行います。

  1. 領域提案(Region Proposal): 画像中から物体が含まれている可能性の高い領域を特定します。初期のR-CNNでは、Selective Searchなどの伝統的な画像処理アルゴリズムが用いられました。これにより、数千もの候補領域が生成されます。
  2. 特徴抽出(Feature Extraction): 各候補領域に対して、事前に学習済みのCNN(例:AlexNet)を用いて固定長の特徴ベクトルを抽出します。これは、CNNが画像の特徴を効果的に捉える能力を利用するものです。抽出された特徴ベクトルは、候補領域の視覚的な内容を表します。
  3. 物体分類(Object Classification): 抽出された特徴ベクトルを基に、各候補領域に存在する物体の種類を分類します。初期のR-CNNでは、線形SVMが各物体クラスに対して学習され、特徴ベクトルがどのクラスに属するかを判定しました。また、バウンディングボックスの回帰(位置の微調整)も行われ、より正確な物体位置を予測します。

R-CNN の仕組み

  1. 入力画像: 物体検出を行いたい画像を入力します。
  2. 領域提案: Selective Searchなどのアルゴリズムを用いて、画像内に約2000個程度の候補領域を生成します。これらの領域は、物体が含まれている可能性が高いとされるものです。
  3. CNNによる特徴抽出: 各候補領域をCNNに入力し、固定サイズの特徴ベクトル(例:4096次元)を抽出します。この際、候補領域はCNNの入力サイズに合わせてワーピング(歪ませる)処理が行われることがあります。
  4. 分類と回帰: 抽出された特徴ベクトルは、各物体クラスに対応するSVM分類器に入力され、その領域がどのクラスに属するかのスコアが得られます。同時に、バウンディングボックス回帰器が、提案された領域の位置と形状をより正確な物体のバウンディングボックスに調整します。
  5. 非最大抑制(Non-Maximum Suppression, NMS): 同じ物体に対して複数の重なったバウンディングボックスが予測されることがあるため、NMSを用いて最も信頼度の高いバウンディングボックスを残し、重複するものを除去します。

R-CNN のメリット

  • 高い検出精度: 当時の物体検出において、深層学習の有効性を示し、大幅な精度向上を達成しました。
  • CNNによる強力な特徴表現: CNNが学習した豊富な特徴量を用いることで、様々な物体を認識する能力が高いです。

R-CNN のデメリット

  • 計算コストが高い: 各候補領域に対して個別にCNNの順伝播を行うため、計算量が膨大で処理に時間がかかります。
  • 処理速度が遅い: 上記の計算コストの高さから、リアルタイムでの物体検出には適していません。
  • 領域提案アルゴリズムのボトルネック: 領域提案の段階がCNNとは独立しているため、エンドツーエンドの学習ができません。また、領域提案の性能が全体の検出精度に影響を与えます。
  • 候補領域のリサイズによる歪み: CNNへの入力サイズを固定する必要があるため、候補領域を無理やりリサイズすることで、物体の形状が歪み、特徴抽出の精度に影響を与える可能性があります。

R-CNN の応用例

R-CNNは、その後の物体検出研究の基礎となり、様々な応用分野に影響を与えました。

  • 画像内の特定の物体の検出: 静止画像内の自動車、人物、動物などの物体を検出するタスク。
  • 監視カメラ映像の解析: 特定の物体の出現や行動を検出するシステム。
  • 自動運転: 歩行者や車両などの認識の初期の研究。

R-CNN(Regions with Convolutional Neural Network)は、深層学習を物体検出に導入した初期の重要な手法であり、高い検出精度を示しましたが、計算コストや処理速度の面で課題がありました。その後のFast R-CNN、Faster R-CNNといった後継の手法は、これらの課題を克服し、より効率的で高性能な物体検出システムへと発展していきました。R-CNNの基本的なアイデアは、現代の物体検出技術においても重要な概念として受け継がれています。

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