ResNetとは

ResNet(Residual Network)とは、2015年のImageNet Large Scale Visual Recognition Challenge(ILSVRC)で圧倒的な成績を収めた深層畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の画期的なアーキテクチャです。

その主要な特徴は、「Residual Block(残差ブロック)」と呼ばれる特殊な構造と、「Skip Connection(スキップコネクション)」と呼ばれる層を跨いだ接続を導入することで、従来の深いネットワークで深刻化していた勾配消失問題を克服し、非常に深いネットワークの学習を可能にした点にあります。

ResNet の基本概念

従来の深いニューラルネットワークでは、層を深くするにつれて、逆伝播時に勾配が徐々に小さくなり、浅い層まで十分に伝わらなくなる勾配消失問題が深刻化し、学習が困難になるという課題がありました。

ResNet は、この問題を解決するために、Residual Block において、層を通過する通常の処理(例えば、畳み込み層と活性化関数)の出力に、そのブロックへの入力を直接加算するSkip Connection を導入しました。

これにより、ネットワークは恒等写像(入力をそのまま出力する写像)を学習することが容易になり、深い層を追加しても性能が劣化する問題を緩和し、むしろ性能向上に繋がるようになりました。

ResNet のアーキテクチャ

ResNet の基本的な構成要素は、Residual Block です。Residual Block には、主に以下の2つのタイプがあります。

  1. Basic Block: 比較的浅いResNet(例:ResNet-18、ResNet-34)で使用され、2つの畳み込み層(通常は3×3フィルタ)とそれらの間の活性化関数(ReLU)で構成されます。Skip Connection は、これらの2つの畳み込み層をバイパスし、入力がそのまま出力に加算されます。
  2. Bottleneck Block: より深いResNet(例:ResNet-50、ResNet-101、ResNet-152)で使用され、計算コストを削減するために導入されました。1×1畳み込み層でチャネル数を削減し、3×3畳み込み層で特徴を抽出し、再び1×1畳み込み層で元のチャネル数に戻すという構造を持ちます。Skip Connection は、これらの3つの畳み込み層をバイパスし、入力がそのまま出力に加算されます。

ResNet の全体的なアーキテクチャは、初期の畳み込み層とプーリング層の後に、複数のResidual Block が積み重ねられた構造を持ち、最後に平均プーリング層と全結合層を経てクラス分類を行います。ResNet の深さ(層数)は、Residual Block の繰り返し回数によって異なり、ResNet-18、ResNet-34、ResNet-50、ResNet-101、ResNet-152 など、様々な深さのモデルが存在します。

ResNet の特徴

  • Residual Block: Skip Connection を用いて、層を跨いだ情報の直接的な伝達を可能にし、勾配消失問題を緩和します。
  • Skip Connection(恒等写像の学習): ネットワークが恒等写像を学習することを容易にし、深い層を追加しても性能が劣化する問題を解決します。
  • 非常に深いネットワークの学習: 多数の層を積み重ねた非常に深いネットワークの学習を効果的に行うことができます。
  • 高い認識精度: ILSVRC 2015で優勝するなど、画像認識タスクにおいて非常に高い性能を達成しました。

ResNet のメリット

  • 勾配消失問題の克服: 深いネットワークの学習を可能にする最大の利点です。
  • 性能向上: 深いネットワークにより、より複雑な特徴を捉えることができ、認識精度が向上します。
  • 学習の容易さ: 従来の深いネットワークと比較して、学習が容易で収束しやすいです。
  • 幅広い応用: 画像認識だけでなく、物体検出、セマンティックセグメンテーション、自然言語処理など、様々な分野に応用されています。

ResNet のデメリット

  • パラメータ数の増加: 深いモデルでは、パラメータ数が多くなる傾向があります。
  • ネットワークの複雑さ: 従来のシンプルなCNNと比較して、構造が複雑になります。

ResNet の応用例

ResNet は、現代のコンピュータビジョンにおける基盤的なアーキテクチャの一つとして、幅広い分野で利用されています。

  • 画像分類: ImageNetなどの大規模画像データセットを用いた高精度な画像分類
  • 物体検出: Faster R-CNN、Mask R-CNNなどの高性能な物体検出フレームワークのバックボーンネットワークとして利用
  • セマンティックセグメンテーション: U-Netなどのセグメンテーションモデルのバックボーンネットワークとして利用
  • 顔認識: 大規模な顔画像データセットを用いた高精度な顔認識システム
  • 自然言語処理: Transformerなどの最新の自然言語処理モデルにおいても、ResNetのアイデアが取り入れられています。

ResNet(Residual Network)は、Skip Connection を導入することで勾配消失問題を克服し、非常に深いニューラルネットワークの学習を可能にした画期的なアーキテクチャです。その高い性能と汎用性から、現代の深層学習、特にコンピュータビジョンの分野において、不可欠な技術となっています。

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