2025年のテクノロジートレンドを追う ~RustとWebAssemblyの台頭 その2
前回は「2025年のテクノロジートレンドを追う ~RustとWebAssemblyの台頭」と題して、Rustについてご紹介しました。今回はその続き!ということでWebAssembly (WASM) についてご紹介しています。
WebAssembly (WASM) とは ~Webの可能性を拡張する革新的な技術
WebAssembly(WASM、ワズムといいます)は、Webブラウザ上でネイティブに近いパフォーマンスを実現するための革新的な技術です。
従来のWeb開発の中心であったJavaScriptの弱点を補い、Webアプリケーションの可能性を大きく広げる役割を担っています。簡単に言うと、「Webブラウザ上で高速に動作するバイナリコード形式」と言えるでしょう。
WebAssemblyは、スタックベースの仮想マシン向けのバイナリ命令形式として定義されています。これは、人間が直接読むことは難しいですが、コンピュータにとっては非常に効率的に解釈・実行できる形式です。主な目的は、Webブラウザ上で高速な実行環境を提供することであり、特にパフォーマンスが重要なWebアプリケーション(例:ゲーム、グラフィック集約型アプリケーション、CADツールなど)において効果を発揮します。
WebAssemblyの仕組みと特徴
従来のWebの仕組み:JavaScriptの役割
従来のWebブラウザでは、主にJavaScriptがWebページに動的な機能を追加するために使用されてきました。JavaScriptは、Webブラウザ上で解釈・実行されるスクリプト言語です。しかし、JavaScriptは動的型付け言語であり、実行時に解釈されるため、複雑な処理や計算を行う際にはパフォーマンスの限界がありました。
WebAssemblyの登場:バイナリコードの力
WebAssemblyは、このJavaScriptのパフォーマンスの限界を克服するために開発されました。WebAssemblyは、人間が読むのは難しいですが、コンピュータが効率的に解釈・実行できるバイナリコード形式です。簡単に言うと、Webブラウザ上で高速に動作する「機械語に近い形式」と言えます。
WebAssemblyの仕組み:コンパイルから実行まで
WebAssemblyの仕組みは、大きく分けて以下のステップで構成されます。
- ソースコードの作成: C、C++、Rustなどのプログラミング言語でプログラムを作成します。これらの言語は、WebAssemblyにコンパイルできる言語です。
- コンパイル: 作成したソースコードをWebAssemblyコンパイラ(例:Emscripten、wasi-sdk)を使ってWebAssemblyバイトコード(
.wasm
ファイル)に変換します。この.wasm
ファイルが、Webブラウザで実行されるバイナリコードです。 - Webブラウザでの実行: Webページに
.wasm
ファイルを組み込みます。Webブラウザは、この.wasm
ファイルを高速に解釈・実行します。
WebAssemblyが解決する課題
従来のWeb開発では、JavaScriptが唯一のクライアントサイドスクリプト言語でした。しかし、JavaScriptは動的型付け言語であり、実行時に解釈されるため、パフォーマンスに限界がありました。特に、複雑な計算やグラフィック処理を伴うアプリケーションでは、パフォーマンスがボトルネックとなることがありました。
WebAssemblyは、これらの課題を解決するために開発されました。
- JavaScriptのパフォーマンスの限界: JavaScriptは、動的型付け言語であり、実行時に解釈されるため、ネイティブコードに比べて実行速度が遅いという課題がありました。WebAssemblyは、バイナリ形式であるため、より高速に実行できます。
- 言語の制約: 従来のWeb開発では、JavaScriptしかクライアントサイドで使用できませんでしたが、WebAssemblyにより、C、C++、Rustなど、様々な言語を使用できるようになりました。
WebAssemblyとJavaScriptの関係
WebAssemblyは、JavaScriptを置き換えるものではありません。むしろ、JavaScriptと連携して動作するように設計されています。
- JavaScriptからのWebAssemblyの呼び出し: JavaScriptからWebAssemblyの関数を呼び出すことができます。これにより、パフォーマンスが重要な処理をWebAssemblyに任せ、それ以外の処理をJavaScriptで行うことができます。
- WebAssemblyからのJavaScriptの呼び出し: 逆に、WebAssemblyからJavaScriptの関数を呼び出すこともできます。これにより、WebAssemblyからDOM操作など、Webブラウザの機能にアクセスすることができます。
つまり、WebAssemblyはJavaScriptの「相棒」として、Webアプリケーションのパフォーマンスを向上させる役割を担っていると言えます。
次の記事では、”RustとWebAssemblyを組み合わせるメリット “について解説していきます。
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この記事を書いた人
株式会社APPSWINGBY マーケティング
APPSWINGBY(アップスイングバイ)は、アプリケーション開発事業を通して、お客様のビジネスの加速に貢献することを目指すITソリューションを提供する会社です。
ご支援業種
情報・通信、医療、製造、金融(銀行・証券・保険・決済)、メディア、流通・EC・運輸 など多数
監修
株式会社APPSWINGBY
CTO 川嶋秀一
動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。