長引く円安でクラウドサービスの従量課金が予算や経営を圧迫している

円安が150円前後で推移し、長引く円安でクラウドサービスの従量課金が、当初の予定を大幅に超過し、予算や経営を圧迫している。円安と従量課金による予算外のクラウドサービス利用料金の請求で困っている。という内容の声が多く聞こえてくるようになりました。

円安・物価高の波は、システム予算にも悪い影響を与えています。

クラウドサービスは従量課金が基本

クラウドサービスはAWSでもGCPでも、Azureでも従量課金が基本です。

最も利用されているサーバインスタンスであろうAWSのEC2の料金体系でも、様々な契約形態がありますが、基本となるサービスの料金は、時間単位(または秒単位)の時間単価がUS$で表示されています。

また、サーバインスタンスの時間料金の他、データ転送の送信/受信料量に応じて、データ転送料金が付加されているのが特長です。データ転送料金はGB単位で送信したデータ料金の総量によって単価が異なるという料金設定です。

データの転送量は、システムの利用料によって大きく異なる為、利用料金を正確に把握することはできません。

当然、データ転送料金が跳ね上がったからといって提供しているサービスを停止することもできませんので、請求書に記載されている金額を見て驚かれるといったケースがこの悪い円安の状況下において増えているのが現状です。

Amazon EC2の料金

Amazon EC2の料金ページからAmazon EC2の現在の料金についてお浚いしておきます。

Amazon EC2は、契約内容の違いによって料金が異なります。Amazon EC2の提供形態は、「オンデマンド」「Savings Plans」「Amazon EC2スポットインスタンス」から構成され、オンデマンドは長期契約のない時間単位で課金される契約、Savings Plansは1年または3年で契約期間を縛る長期契約、Amazon EC2スポットインスタンスは、AWSで使われていないインスタンスをスポット的に利用することできる契約です。

長期での契約を決定していない場合は、オンデマンドを選びますので今回はAmazon EC2オンデマンド料金について掘り下げてみます。

条件は、インスタンスサイズが小さすぎても大きすぎても比較になりませんので、リージョンが東京、インスタンスタイプはvCPUが8、メモリが32Gib、ストレージはEBSのみとしました。

では、さっそくAmazon EC2でのインスタンス名は「t4g.2xlarge」の料金を見てみましょう。

Amazon EC2 t4g.2xlargeのオンデマンドの料金(/h)

t4g.2xlargeのオンデマンド料金(時間)USD 0.3456
Amazon EC2 t4g.2xlargeのオンデマンドの料金(/h)

米ドル/円換算 AWS EC2オンデマンド料金”円換算”表

AWSの料金表は、USドルで表記されていますので、円換算してみたのが以下の表です。

米ドル/円レート(想定)時間単価(円換算)24時間料金(試算)30日料金(試算)
200円69円1,659円49,766円
190円66円1,576円47,278円
180円62円1,493円44,790円
170円59円1,410円42,301円
160円55円1,327円39,813円
150円52円1,244円37,325円
140円48円1,161円34,836円
130円45円1,078円32,348円
120円41円995円29,860円
110円38円912円27,372円
米ドル/円換算 AWS EC2オンデマンド料金表

2023年11月6日現在の米ドル/円は、147.18円ですので、上記の表では四捨五入として150円として考えます。約2年前の2021年1月1日時点のレートが104円でしたので、こちらもざっくりと四捨五入で100円として考えます。

その差額を月単位で考えますと37,325円―24,883円=12442円。今回はざっくりと計算したものですので正確な数字という訳ではありませんが、凡そ150%近い値上がりとなっています。

ランニングコストを抑えたサービスへの切り替え

円安・物価高の影響でクラウドサービスの利用料金が跳ね上がっている現状で、今後もこの円安の傾向が収まり円高に向かうのか、それとも200円を目指し、円安に加速がかかるのかは正直わかりませんが、今後は高騰し続ける可能性が十分になるであろうクラウドサービスのランニングコストを意識したクラウドサービスの選定や”お引っ越し”というのも考慮すべき重要な選択肢となってきます。

リアーキテクチャという選択肢

APPSWINGBYでは、以前よりクライアントサーバアーキテクチャからマイクロサービスアーキテクチャへのアーキテクチャの変更やコンテナを中心としたサーバレスアーキテクチャへのリアーキテクチャへの切り替えに取り組んできました。

また、「従量課金サービスを前途したクラウドサービスから固定料金を基本としたサービスへの切り替え」についてもここ数年、要望が増えてきていることから自社内で検証環境を構築するなど取り組みを進めてきました。

これまでのリアーキテクチャと言えば、長年使い続けてきたシステムが老朽化し、スケールやメンテナンス性の低下、セキュリティ脆弱性、開発からサービスリリースへの速度低下などが理由でリアーキテクチャを希望される企業様が多かったのが現状だったのですが、今後も円安が長引く状況が続くようであれば、クラウドサービスの利用料金(ランニングコスト)問題を解決する為のクラウドサービスの切り替え、リアーキテクチャの検討が喫緊の課題となるかもしれません。