.NET ガベージコレクション:進化するメモリ管理

アプリケーションのパフォーマンスと安定性に直接影響するガベージコレクション(GC)は、.NET 9でさらに進化を遂げたとの情報がありましたので、今回は、.NET 9で改良されたという”ガベージコレクション(GC)”について解説していきます。

ガベージコレクションとは

ガベージコレクション(GC)とは、アプリケーションの実行中に使用されなくなったメモリ領域を自動的に解放する機能です。これにより、開発者はメモリリークやメモリ破損などの問題を気にすることなく、アプリケーションのロジックに集中することができます。

GCの仕組み

ガベージコレクション(GC)は、マネージドヒープ と呼ばれるメモリ領域を管理します。アプリケーションが新しいオブジェクトを作成すると、GCはマネージドヒープから必要なメモリを割り当てます。そして、オブジェクトが不要になったと判断すると、GCは自動的にそのメモリを解放します。

ガベージコレクション(GC)がオブジェクトを不要と判断する基準は、ルートからの到達可能性 です。ルートとは、現在使用中のオブジェクトへの参照を保持している変数やレジスタのことです。GCは、ルートから到達可能なオブジェクトを「生きている」オブジェクトとみなし、到達不可能なオブジェクトを「死んでいる」オブジェクトとみなします。そして、死んでいるオブジェクトが占有しているメモリを解放します。

ガベージコレクション(GC)の動作

ガベージコレクション(GC)は、定期的に、またはメモリ不足が発生したときに動作します。GCが動作すると、以下の処理が行われます。

  1. マーク: ルートから到達可能なオブジェクトをマークします。
  2. スイープ: マネージドヒープをスキャンし、マークされていないオブジェクトを解放します。
  3. コンパクション: 解放されたメモリ領域を整理し、断片化を防ぎます。

従来のGCの課題

従来の.NET FrameworkのGCは、ワークステーションGCとサーバーGCの2つのモードがありました。ワークステーションGCはデスクトップアプリケーション向けに、サーバーGCはサーバーアプリケーション向けに最適化されていましたが、いずれも 利用可能なメモリとCPUリソースに適応する という設計でした。

これは、アプリケーションが実際に必要とするメモリ量とは必ずしも一致せず、メモリ使用量の増減が激しいアプリケーションでは、GCが頻繁に実行されパフォーマンスが低下する可能性がありました。また、大量のメモリを必要とするアプリケーションでは、GCによる一時停止時間が長くなり、応答性の低下を招くことも懸念されました。

.NET 9のGCの改良点

.NET 9では、GCが アプリケーションが要求するメモリに適応する ように改良されました。これは、アプリケーションのメモリ使用量を監視し、GCの実行頻度やヒープサイズを動的に調整することで実現されています。

この改良により、以下のメリットが期待できます。

  • パフォーマンスの向上: GCの実行頻度が減ることで、CPU使用率が低下し、アプリケーションのパフォーマンスが向上します。
  • メモリ使用量の最適化: アプリケーションが必要とするメモリ量に合わせてヒープサイズが調整されるため、メモリ使用量が最適化されます。
  • 応答性の向上: GCによる一時停止時間が短縮されるため、アプリケーションの応答性が向上します。

Microsoft Ignite .NET 9 の新機能(外部リンク)

.NET 9のGCの仕組み

.NET 9のGCでは、 アプリケーションサイズへの動的適応(DATAS) と呼ばれる技術が導入されています。

NET 9で導入された アプリケーションサイズへの動的適応 (DATAS) は、ガベージコレクション (GC) の効率を大幅に向上させる革新的な技術です。従来のGCでは、アプリケーションが使用するメモリ量に関わらず、一定のルールでGCが実行されていました。しかし、DATASはアプリケーションのメモリ使用量を監視し、GCの動作を動的に調整することで、より効率的なメモリ管理を実現します。

DATASは、アプリケーションのメモリ使用量を監視し、以下の処理を実行することで、GCの効率化を図っています。

  1. 長期データのサイズに基づいて、次のGCがトリガーされる前に許可される割り当ての最大量を設定: これにより、ヒープサイズを制限し、不要なGCの実行を抑制します。
  2. GCの実行中に、不要になったオブジェクトを解放するだけでなく、使用中のオブジェクトを再配置: これにより、メモリの断片化を防ぎ、効率的なメモリ利用を実現します。

DATASのメリット

DATASの導入により、以下のメリットが期待できます。

  • パフォーマンスの向上: GCの実行頻度が減ることで、CPU使用率が低下し、アプリケーションのパフォーマンスが向上します。
  • メモリ使用量の最適化: アプリケーションが必要とするメモリ量に合わせてGCの動作が調整されるため、メモリ使用量が最適化されます。
  • 応答性の向上: GCによる一時停止時間が短縮されるため、アプリケーションの応答性が向上します。

Microsoft Ignite アプリケーションサイズへの動的適応 (DATAS)(外部リンク)

.NET 9のGCを活用するためのポイント

.NET 9のGCは、デフォルトで有効になっています。ただし、アプリケーションの特性によっては、GCの設定を調整することで、さらなるパフォーマンス向上を図ることが可能です。

  • GCServer: サーバーアプリケーションでは、GCServerを有効にすることで、サーバーGCモードが使用され、マルチコアCPUを効率的に活用したGCが実行されます。
  • GCHeapCount: サーバーGCモードでは、GCHeapCountを設定することで、GCヒープの数を指定することができます。CPUコア数に合わせてヒープ数を調整することで、GCの並列処理効率を高めることができます。
  • GCConcurrent: GCConcurrentを有効にすることで、バックグラウンドGCが実行され、GCによるアプリケーションの一時停止時間を短縮することができます。

.NET 9のGCは、アプリケーションが要求するメモリに適応するようになり、パフォーマンス、メモリ使用量、応答性の面で significant な改良が加えられました。DATASなどの新技術により、GCの効率化が図られ、開発者はより快適な開発体験を得ることができます。GCの設定を適切に調整することで、アプリケーションの性能を最大限に引き出すことができます。

システム開発にお困りではありませんか?

この記事を書いた人

株式会社APPSWINGBY

株式会社APPSWINGBY マーケティング

APPSWINGBY(アップスイングバイ)は、アプリケーション開発事業を通して、お客様のビジネスの加速に貢献することを目指すITソリューションを提供する会社です。

ご支援業種

情報・通信、医療、製造、金融(銀行・証券・保険・決済)、メディア、流通・EC・運輸 など多数

監修

APPSWINGBY CTO川嶋秀一

株式会社APPSWINGBY
CTO 川嶋秀一

動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。