PWAリファクタリングが既存システムにもたらす「変革」とは?

前回は「既存システムを強力に変革するPWAリファクタリング ~パフォーマンス向上とUX改善の鍵」と題し、既存システムが抱える「見えない課題」についてご紹介しました。今回はPWAリファクタリングが既存システムにもたらす「変革」についてご紹介していきます。

2. PWAリファクタリングが既存システムにもたらす「劇的な変革」とは?

前章では、既存システムが抱える様々な課題が、企業のビジネス成長を阻害している実態を解説いたしました。これらの課題を解決し、デジタル変革(DX)を加速させる強力な手段の一つが、PWA(プログレッシブウェブアプリ)リファクタリングです。

PWAリファクタリングは、既存のWebシステムにPWAの技術要素を導入することで、そのパフォーマンスとユーザー体験(UX)を劇的に向上させます。この章では、PWAの基本概念から、それがどのように既存システムに革新をもたらすのかを具体的に掘り下げていきます。

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2.1. PWA(プログレッシブウェブアプリ)とは何か?既存Webとの決定的な違い

PWA(Progressive Web Apps)とは、その名の通り、「プログレッシブ(漸進的)」に進化するWebアプリケーションを指します。

具体的には、Webサイトでありながら、ネイティブアプリ(スマートフォンのアプリストアからダウンロードして利用するアプリ)のような機能や体験を提供する技術の総です。

これまでのWebサイトは、インターネット接続が必須であり、ブラウザ上で動作するものでした。一方、ネイティブアプリは、デバイスのストレージにインストールされ、オフラインでも動作し、プッシュ通知などの強力な機能を提供します。PWAは、このWebサイトとネイティブアプリのそれぞれの「良いとこ取り」を実現する画期的な技術なのです。

では、PWAと既存のWebサイトにはどのような決定的な違いがあるのでしょうか。以下の表で比較してご説明します。

PWA(プログレッシブウェブアプリ)とは何か?既存Webとの決定的な違い
特徴既存のWebサイトPWA(Progressive Web Apps)ネイティブアプリ
インストール不要(ブラウザでURLにアクセス)ホーム画面に追加可能(インストール不要)アプリストアからインストールが必要
オフライン動作不可(インターネット接続必須)可能(Service Workerによるキャッシュ利用)可能
プッシュ通知基本的に不可可能(ユーザーの許可が必要)可能
デバイス機能連携制限あり(カメラ、GPSなど一部は可能)一部のデバイス機能にアクセス可能(より広範囲)ほぼ全てのデバイス機能にアクセス可能
更新サーバー側の更新で自動適用サーバー側の更新で自動適用アプリストアからのアップデートが必要
開発コスト・期間比較的低コスト・短期間比較的低コスト・短期間(Web技術を流用)高コスト・長期間(プラットフォーム毎の開発)
配布URL共有URL共有、ホーム画面への追加アプリストア経由
2.1. PWA(プログレッシブウェブアプリ)とは何か?既存Webとの決定的な違い

この表からわかるように、PWAは既存のWebサイトの柔軟性と開発効率の良さを保ちつつ、ネイティブアプリに匹敵するリッチな機能と体験を提供できる点が大きな特徴です。特別なアプリストアへの登録や審査が不要であり、WebサイトのURLにアクセスするだけで、ユーザーはPWAの恩恵を受けることができます。これにより、開発・運用コストを抑えながら、ユーザーエンゲージメントを最大化する新たな可能性が拓かれます。

2.2. PWAリファクタリングが実現するパフォーマンスの飛躍的向上

既存システムの課題として、パフォーマンスの低下を挙げました。PWAリファクタリングは、このパフォーマンス問題を根本から解決し、Webサイトの表示速度や操作性を劇的に向上させる強力な手段となります。

その中心的な役割を担うのが「Service Worker(サービスワーカー)」という技術です。

Service Workerは、ブラウザとネットワークの間で動作するスクリプトの一種で、Webページとは独立してバックグラウンドで処理を実行できます。このService Workerが、Webサイトのパフォーマンス向上にどのように貢献するのか、主なメカニズムを解説します。

サービスワーカーの主なメカニズム
  1. オフラインキャッシュによる高速ロード: Service Workerは、ユーザーが一度訪れたWebサイトのコンテンツ(画像、CSS、JavaScriptファイルなど)をデバイスのローカルストレージにキャッシュ(一時保存)することができます。これにより、ユーザーが次に同じWebサイトにアクセスした際、インターネット接続がないオフライン状態でも、キャッシュされたコンテンツを即座に表示できます。オンライン時でも、ネットワークからデータを取得するよりもキャッシュから読み込む方が圧倒的に速いため、ページの表示速度が飛躍的に向上します。これは、特にモバイル環境でのユーザー体験において、体感速度に大きな差を生み出します。
  2. リソース最適化と読み込み順序の制御: Service Workerは、どのリソースをいつ、どのように読み込むかを細かく制御できます。例えば、ユーザーが最初に目にするコンテンツ(ファーストビュー)を優先的に読み込み、それ以外のコンテンツは後から非同期で読み込むといった最適化が可能です。これにより、ユーザーはWebサイトにアクセスした瞬間に、必要な情報がすぐに表示されるため、待ち時間のストレスを感じにくくなります。
  3. バックグラウンド同期とデータ更新: Service Workerは、ユーザーがWebサイトを閉じている状態でもバックグラウンドで動作し、サーバーとデータの同期を行うことができます。例えば、記事の更新や新着情報の取得などを事前に済ませておくことで、ユーザーが次にアクセスした際に常に最新の情報が即座に表示されるようにできます。これにより、データの鮮度を保ちつつ、ユーザーが待つことなく情報にアクセスできるようになります。

これらのService Workerの機能は、既存のWebシステムに導入することで、特に「重い」と指摘されがちなページの表示速度や、複雑な操作を伴うアプリケーションの応答性を大きく改善します。Googleが提唱するWebパフォーマンス指標である「Core Web Vitals」の改善にも直結し、検索エンジンの評価向上にも繋がるため、ビジネス上も大きなメリットがあると言えるでしょう。

2.3. ネイティブアプリ級のユーザー体験(UX)を実現するPWAの優位性

PWAが既存システムにもたらすもう一つの「劇的な変革」は、ネイティブアプリに匹敵する、あるいはそれ以上のユーザー体験(UX)の提供です。単なるWebサイトでは実現が難しかったリッチな体験を、PWAはWeb技術の延長線上で可能にします。

  • ホーム画面への追加(インストール不要): PWAは、ユーザーがWebサイトをブラウザで開いた際に、スマートフォンのホーム画面にアイコンとして追加するよう促すことができます。これにより、ユーザーは次回以降、アプリのようにアイコンをタップするだけでWebサイトに直接アクセスできるようになります。一般的なアプリストアからのダウンロードやインストールといった煩雑な手順が不要なため、ユーザーは手軽に利用を開始でき、サービスへのアクセス性が向上します。これは、ユーザーの継続利用(リテンション)を高める上で非常に強力な機能です。
  • プッシュ通知による効果的な情報伝達: PWAは、ユーザーの許可を得ることで、スマートフォンのネイティブアプリと同じようにプッシュ通知を送信できます。新着情報、セール情報、重要なアップデート、リマインダーなど、ユーザーにとって価値のある情報をタイムリーに通知することで、ユーザーのエンゲージメントを飛躍的に高めることができます。メールやSMSよりも視認性が高く、ユーザーの行動を促しやすいプッシュ通知は、マーケティング戦略や顧客サポートにおいて極めて有効な手段となります。
  • オフライン対応による途切れない体験: 前述のService Workerにより、PWAはオフライン環境でもコンテンツを表示したり、一部の機能を利用したりすることが可能です。インターネット接続が不安定な場所や、移動中の電車内などでも、事前にキャッシュされた情報を閲覧できるため、ユーザーはストレスなくサービスを利用し続けることができます。これにより、ユーザーの利用シーンが広がり、サービスへの依存度を高めることが期待できます。
  • 高速応答とスムーズなアニメーション: PWAは、Service Workerによるキャッシュやリソース最適化に加え、Web技術の進化により、ネイティブアプリに劣らない高速な応答性とスムーズなアニメーションを実現できます。画面遷移時のモタつきがなく、タップやスワイプに対する反応も俊敏であるため、ユーザーはまるでネイティブアプリを使っているかのような快適さを感じられます。このようなストレスフリーな体験は、ユーザーの満足度を高め、サービスへの好感を醸成します。

これらのPWAの機能は、既存のWebシステムを「ただ情報を見る場所」から「積極的に利用したくなるツール」へと変貌させます。これにより、顧客エンゲージメントの向上、コンバージョン率の改善、さらにはブランド価値の向上にも貢献するでしょう。

次回は、PWAリファクタリングが既存システムにもたらす「変革」についてご紹介しました。次回は「【実践】PWAリファクタリング導入のロードマップと成功への鍵」と題し、現在運営中のPWAがリファクタリングに適しているか?を診断する為の方法や評価ポイントやPWAリファクタリングプロジェクトのはじめ方についてご紹介します。

株式会社APPSWINGBYは、PWAの開発、pWAのリファクタリングの他、業務システムやSaaSの新規開発、リファクタリング、リアーキテクチャ、AIシステムの企画から開発から運用保守まで様々な企業のシステム開発を全面的にサポートし、お客様のビジネス成長に貢献いたします。

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この記事を書いた人
株式会社APPSWINGBY
株式会社APPSWINGBY マーケティング

APPSWINGBY(アップスイングバイ)は、アプリケーション開発事業を通して、お客様のビジネスの加速に貢献することを目指すITソリューションを提供する会社です。

ご支援業種

情報・通信、医療、製造、金融(銀行・証券・保険・決済)、メディア、流通・EC・運輸 など多数

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監修
APPSWINGBY CTO川嶋秀一
株式会社APPSWINGBY  CTO 川嶋秀一

動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。

APPSWINGBY CTO川嶋秀一
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